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ヘッドライト点検

難易度指数:2 シールドビームが暗いんじゃありません。電圧が低いから暗いのです!!

旧車のヘッドライトはどれも暗いです。セドグロも例外ではありません。酷い場合は車検に受からない場合もあります。ここまで来ると事態は深刻ですね。良く聞く対策方法として、

等が挙げられます。

オマケ知識(1) 〜〜 ヘッドライト用ランプの種類 〜〜●

電球単体の内部構造、ライトASSYとしての構造により分類できます。

【電球単体】

  • 白熱ランプ(従来タイプ)
  • ハロゲンランプ(ハロゲン式白熱ランプ)

【ライトASSYとしての構造】

  • シールドビーム:
    電球とライトが一体となったもの。よって電球単体での交換は不可能。一体になっているため、レンズ内面に結露や、砂塵が付着しない。ランプの性能を最大限に発揮できる。
  • セミシールドビーム:
    電球とライトが別体となっていて、電球単体で交換が可能。タマ切れ時はシールドビームのようにライトASSY交換ではなく、電球単体交換となる。利点は異型ライトでも生産コストを抑えられ、修理費用も安上がり。しかし、ライトのレンズ内面に結露や砂塵付着がおこり易く、結果として光度減につながる。

以上の組み合わせから、4種類のライトがあります。実際は白熱ランプ式はシールドビーム、ハロゲンランプ式はセミシールドビームが多いです。従って一般的には、

  • “ハロゲン” ・・・ “ハロゲン式セミシールドビーム”
  • “シールドビーム” ・・・ “従来型白熱ランプ式シールドビーム”

となります。このページでもこれを踏襲します。

●オマケ知識(2) 〜〜 ハロゲンランプ 〜〜●

ハロゲンランプと比べた場合、昔の白熱ランプは以下のような欠点があります。

  • フィラメントに使われているタングステンが蒸発し、これがガラス球内面に付着し黒化作用を起すので光の透過率を下げる。
  • タングステンの蒸発でフィラメントが細くなり、電気抵抗が増加して光度が低下する。

ハロゲンランプは蒸発するタングステンが、ランプ内に封入されたハロゲンガスによってフィラメントに戻ると言うサイクル(ハロゲンサイクル)によって、光度低下防止や高寿命を実現させました。アメリカのゼネラルエレクトリック(GE)社の発明で、当初はシングルフィラメントタイプしかありませんでしたが、その後ダブルフィラメントタイプも開発され、ヘッドライト用ランプに採用されるようになりました。

でも良く考えて見ると、そもそもヘッドライトに関する保安基準(車検の合否基準)は、ハロゲンヘッドランプが開発される前に決められた数値です。車検時にこんな数値にパスできないのは、ライト性能以外に原因があるハズ。シールドビームはハロゲンよりも確かに暗いです。角型ライトは形状の関係で丸型ライトよりも光度は出にくいようです。とはいってもノーマルライトで車検にパスできないほど暗い訳がない!!

では旧車のヘッドライトはなぜ暗い、いや暗くなってしまったのでしょうか?

それは・・・

旧車ではハーネスや端子等の劣化により電気抵抗が増加し、ヘッドライトに掛かる電圧が低くなっている

からです。つまりヘッドライト本来の性能が全く発揮できていないと言う事。
本来なら、「バッテリ電圧=ヘッドライトに掛かる電圧」となっていて欲しい訳ですが、途中回路の電気抵抗増大でヘッドライト端子電圧がバッテリ端子電圧に比べて2V以上も低下している場合が多々あります。この低下分の電圧はどこへ行ったかと言うと、電気抵抗により熱になって消費されているのです。こんな状態では暗いのは当たり前。ハロゲン云々の前に、これを何とかしないと明るくなりません。しかも、これを放置すると発生した熱がハーネスやスイッチを焼損・溶損させてしまう原因になります。

これはヘッドライトだけ? いえいえ、別にヘッドライトだけではなく、古くなればすべての回路に言える事です。特に大電流を扱う回路はちょっとした電気抵抗が大きく影響します。オームの法則で「E=IR」って習いましたよね? 普通の回路の消費電流は5A(消費電力60W相当)以下程度が多いですが、仮に回路に0.3オームの抵抗があったとすると、

電圧降下[V] = 電流[A] × 抵抗[オーム] = 5 × 0.3 = 1.5[V]

となります。1.5Vの電圧降下くらいならまだ許せるかもしれません。一方、ヘッドライトの回路は両側で10A以上消費しますので、

電圧降下[V] = 電流[A] × 抵抗[オーム] = 10 × 0.3 = 3.0[V]

となります。電圧降下が3Vにもなると、電源が12Vですから25%もドロップしている事になり、負荷の性能、つまりヘッドライトなら光度にかなりの影響が出ます。0.3オームなんて、普通は無視するレベルの抵抗ですが、電流が大きいところはそうも行かないのです。

※発熱すると電気抵抗は常温よりも更に増加します。

 

電圧降下点検

  1. エンジンを始動し、暖機します。
  2. エンジン回転がアイドルの状態でヘッドライトをONします。ロービームでもハイビームでも良いですが、車検を考えて、ここではハイビームとします。
    そしてこの状態でサーキットテスタを使い、バッテリの端子電圧を測定します。

    アイドル時の規定値 : 11〜14V *

    *ただし、充電系統の機能が正常である事
  3. ライトを点灯させた状態(ハーネスコネクタは接続したまま)で、点灯しているどれか1ヶ所のヘッドライトのハーネスコネクタ背面にサーキットテスタのリード棒をあてて電圧を測定します。


    ライトON時の端子電圧をコネクタ背面から測定


    左画像のアップ

  4. 以上の2種類の測定から電圧降下を算出します。

    「2」で測定した電圧値から「3」で測定した電圧値を差し引いた値(=電圧降下)が、2V未満であること

    【NOTE】

 

対策

電圧降下が2V以上あった場合は、これを下げる対策が必要です。電圧降下“大”の状態でハロゲンにするのは筋違い。一般的には対策方法は

などが挙げられます。

セドグロ330以前では特に回路自体が複雑で、これが電圧降下の主原因になっています。従って根本的に回路を変更するのが簡単かつ確実です。具体的には市販のヘッドライト強化用リレー&ハーネスキットを装着することです。

市販品と使う事になるので、これ以上はハショります。この手の商品はハイワッテージのランプに交換する場合に装着するモノですが、電気抵抗が増大している旧車の場合は、ノーマルのランプでも効果絶大です(キッパリ!)。装着後の電圧降下はほぼゼロになるのは言うまでもありません。

なお、強化ハーネスはもちろん自作も可能で、当サイトの「実験君」では少し詳しい記事があります。

 

参考

I. 保安基準

ヘッドライトの光度に関する道路運送車両法の保安基準を要約して見てみます。車検の時はコレを基準に良否判定が行われます。なお、ライトの明るさ(光度)は“カンデラ[cd]”と言う単位が使われます。

ライトの仕様 指定されている計測条件 左右各々の光度(前方10m)
2灯式  ハイビーム状態 15,000[cd]以上
4灯式その1
  • ハイビーム状態
  • 外側ライトを目隠しし、内側ライトのみで照射
12,000[cd]以上
4灯式その2
  • ハイビーム状態
  • 外側ライト+内側ライトの光度を合算
15,000[cd]以上
【備考】
  • 4灯式は一般的には“その1”の方法で計測します。
    保安基準では“その1”の方法で未達の場合は、“その2”でも良いとされています。
    しかし“その2”は光軸が出にくい欠点があります。
  • ライトの性能は最大光度で225,000[cd]を超えてはなりません。
  • ハロゲン式(セミシールド式)とシールドビーム式の混用は車検に受かりません。
  • 平成10年9月1日以降に製作された車両は保安基準が異なります。

II. 光度比較

このページではヘッドライトを修理すると言うよりはチューンを推奨しています。チューンの仕方でも先述のように色々あるので、パターン別に事例を比較してみます。

例. 丸型4灯ライトでの光度比較
  組み合わせ (ハーネス/ランプ) 光度[cd] *1*2
1 ノーマルハーネス + シールドビーム 10,000
2 ノーマルハーネス + ハロゲンランプ 13,000
3 強化ハーネス装着 + シールドビーム 19,000
4 強化ハーネス装着 + ハロゲンランプ 22,000
*1 エンジン:アイドル状態  ライト:ハイビーム 内側1灯当たりの光度
*2 数値は一例です。車両の仕様やコンデションにより異なる場合があります。

こうやってみると、ノーマルハーネス+ハロゲンランプの組み合わせではまだ車検の合格ラインギリギリですが、強化ハーネスをつければシールドビームでも車検は楽勝です。そして実際の照射フィーリングも、シールドビームは暗いと言う印象は薄くなるハズです。

旧車では各部が劣化しているので、ノーマルの配線では本来のライト性能を発揮できなくなっています。しかし単純に「シールドビームは暗いから」とハロゲンランプに交換される傾向があります。今回はこれが大きな間違いである事をアピールする目的もあってアップしました。これでライトが暗い真の原因がお分かりいただけたでしょうか?

 

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