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シングルキャブ調整

難易度指数:2.5くらい 基本的なアイドル調整だけならそれほど難しくないです

シンクルキャブ(ストロンバーグキャブ*)は基本的にアイドリングの調整しか出来ません。これはSUツインキャブも一応そうですが、シングルキャブはSUキャブとは違い燃料通路が何系統もあるので、アイドル調整不良が通常走行時にまで大きく影響することはあまりありませんし、1点調整しか出来ませんから調整そのものはあまり難しくありません。とはいっても疎かにすると排ガスが濃くなったり、アイドリングが不安定になったり燃費が悪くなることがあります。
良くあるパターンで車検に出すと変に調整されてしまい、具合が悪くなって帰ってくるなんて事があります。車検に余裕で受かる為の調整と、調子良く乗る為の調整は少しちがうんですね。ちょっと変な話しですけど・・・
ここではもちろん調子良く乗る為の調整方法のご紹介です。

*:シングルキャブ形式は内部にあるベンチュリ形状から一般に「ストロンバーグタイプ」と呼びますが、48年規制以前のL20用キャブのベンチュリ形状は一次側がソレックス、二次側がゼニスストロンバーグタイプとなります。

 

調整手順の主な流れ
1.アイドリング時(アクセル=フリー)のキャブのスロットル開度(回転数)を合わせる
2.アイドリング時の空燃比(ガスの濃さ)を合わせる
3.排ガス対策装置(48年規制車)&A/Cアイドルアップの調整をする

 

調 整 箇 所


○印の中が右の画像です。

(フロント方向は→)

 

アジャストスクリューの名前 役    割 締め込むと・・・
スロットルアジャストスクリュー アイドリング時の回転数(スロットル開度)を調整する 回転が上がる(開度大)
アイドルアジャストスクリュー アイドリング時の空燃比(ガスの濃さ)を調整する 空燃比(ガソリン)が薄くなる

 

 

1.調整の前に・・・

1−1.フロートチャンバの油面チェック

キャブ調整の前に油面をチェックします。油面は全回転域の空燃比に影響するので重要です。
キャブ前部のフロートチャンバはガラスで内部が見えるようになっていて、油面の高さがチェックできます。ガラスには基準線があるので容易に判ります。
だいたい基準線から2ミリ以内の範囲ならOK。それ以上なら油面調整が必要となります。

 

2.基本的な調整

2−1.エンジンが掛からないほど狂っている場合の調整

キャブ調整はエンジンが掛かっている状態で調整するのが大原則ですが、オーバーホール(O/H)等でイニシャルが完全に狂ってしまい、エンジンを掛けられる状態ではない時は次のようにしてとりあえず掛かるようにします。エンジンが掛かる場合はここは省略し、2−2から取りかかっても大丈夫です。

スロットルアジャストスクリュー

アイドルアジャストスクリュー

2−2.アイドル時のスロットル開度及び回転数調整


チョークバルブが直立している・・・OK

     
チョークバルブが少しでも閉じていれば暖機が終わっていないか、チョーク固着 ・・・ NG

2−3.ガスの濃さを調整する

次はガスの濃さの調整です。一度調整されているなら大きく変える必要はないと思いますので、微調整程度です。目標は調子が悪くならない範囲で出来るだけ薄目にセットする事。
  • エンジンは掛けた状態でアイドルアジャストスクリューを現状から半〜1回転程度戻し(緩め)ます。(多分回転数は殆ど変りません)
  • そこから序々に締め込みます。
  • エンジン回転数が下がり始める(バラつき始める)ポイントを見つけ、その直前で止めます。これがベストポイント。ちなみに私はゆっくり締め込んで行き、バラついたな?と思ったところから45度くらい戻したところにします。
  • 何度か空吹かししたり軽く走行したりして様子を見ます。エンジン回転数は規定通りか? アイドリングが安定しているか? をチェック。ずれていたら「2−2」からやり直しですが、超微調整ですから次の様にします
  • 調整後にアイドリングが不安定な(ばらつく)場合は大抵、「薄過ぎ」です。アイドルアジャストスクリューを45度ほど緩めて様子を見ます。

バッチリ調整出来ていれば、調子も良く、排ガスも規制値(CO:4.5%、HC:1200ppm)以下のハズです。特にCOは2〜3%であればOKとします。

ワンポイントアドバイス その1
アイドルアジャストスクリューはベスト位置から緩み方向、締め方向どちらにずれていてもアイドル時のエンジン回転はスムーズではなくなります。調整時はとにかく最も回転が高くなるところを探します。そして更にその範囲でもなるべく薄くする(締め込む)のが良といわれます。

ワンポイントアドバイス その2
上記のような調整で車検に挑んだ場合、各部がへたり気味のエンジンではパス出来ないことがあります。触媒のない48年規制以前の車両では元々規制値スレスレなので余裕がありません。また48年規制よりも前(完全未対策)のエンジンでは、メーカー指定のアイドル回転数が低過ぎなので、少々濃い目の調整をしがちです。
こんな場合は以下の様にします。
  1. アイドルアジャストスクリューをやや締め込む
  2. スロットルアジャストスクリューでアイドル回転数を800〜1000rpmくらいにする

アイドルアジャストスクリューを締め込むとガスが薄くなるので、COが減少しますが、ラフアイドルとなるので今度はHCが増大します。そこで、アイドル回転数をやや高めにしてやれば、安定度が増すのでHCが元に戻ります。排ガス検査でNGになる項目は大抵COですので、ムリに落とすやり方がコレです。タマにバキュームホースを抜いたりする話を聞きますが、一時的とはいえあまり適切な処置とは思えず、エンジンルームの目視検査でも引っ掛かります。

また車検後は、正規の調整をやり直さないと、運転性不良の原因となります。再調整の時、48年規制よりも前のエンジンではアイドル回転数を600〜700rpm程度にしておいたほうが、安定するので良いでしょう。

 

2−4.エアコン or クーラーアイドルアップ回転数の調整 (純正エアコン・クーラー装着車)

  エアコン(クーラー)コンプレッサがONになった時の回転数を調整します。
*: 下記手順や画像は230後期(1973年3月生産以降)のものです。それ以外の年式、型式ではエンジンが同じでも車両型式が異なると、基本構造は同じながら部品や調整方法が微妙に異なります。 

なお1973年2月以前の場合、ロッドとアームはチェーンで繋がれています。画像はありませんが、チェーンを引っ掛ける位置で調整が出来る他は基本的には同じです。でも実はこのタイプ、しみじみ触ったことがありません。。。

 

アイドル回転数調整値
  M/T車[rpm] A/T車[rpm]
(Nレンジ)
48年排ガス規制適合車
M/T車[rpm] A/T車[rpm]
(Nレンジ)
コンプレッサOFF 550 700 650 700
コンプレッサON 800

 

3.48年排ガス規制関連装置の調整

3−1.ダッシュポット

アクセル急に戻した時、スロットルが急に全閉となるとエンジンの燃焼室では不完全燃焼を起こし、HCが増大します。また更に、排ガス規制でスロー時の空燃比を薄くしてしまっているので、急激に閉じてしまうと、回転が落ち込み過ぎてエンストしやすくなってしまうのです(特に無負荷時)。そこでゆっくり閉じるような緩衝装置が追加されました。それがダッシュポット(空気緩衝装置)です。
なお、排ガス対策とは関係なく、規制前から単にエンスト防止用に採用していたものもあります。L型6気筒車ではA/T車が該当するようです。
このダッシュポットの調整方法をご紹介致します。なお、方法は2通りありますが、正確にできる「セット回転法」でご説明します。

また、うまく調整されていないと、こんな事が起こります。

3−2.BCDD(ブースト コントロール ディクレーション デバイス)

目的はダッシュポットと同じ減速時のHC抑制ですが、特にエンジンブレーキを効かせたような運転状況の時に、バキューム(負圧)を感知しながら設定された圧力以上になると一定時間、回転の下がり具合を制御します。キャブ内にスロットルバルブをバイパスする補助通路があって、そこにある混合気バルブが一定時間開くことにより、混合気が供給されてスロットルが開いたのと同じ状態にします。
しかし停車中に作動するとかえって排ガスが汚くなるので、車速10km/h以下では設定圧に達してもキャンセル機構(バキュームコントロールソレノイドバルブ)が働き作動しません。
なお、M/T車のみ搭載。
(下の画像はその概略図になります。)

←画像をクリックして拡大図をご覧下さい。

さて前置きが複雑になってしまいましたが、調整手順です。ちょっと難しいので、あまり触らないほうが良いかも。

調整は以下の事に注意すると良いでしょう。

調整スクリューの回転方向 作動時間 “T”
時計方向 長くなる 長くなる
反時計方向 短くなる 短くなる

* 調整は1回あたりスクリューを約45度以下ずつ回して行う(45度回すと“T”は2秒変化)。

また、うまく調整されていないと、こんな事が起こります。

* ぶっちゃけた話し、BCDDは作動が過多より作動を止めてしまったほうが運転性は向上します。逆にダッシュポットは作動させないとエンストしやすくなるので殺してしまうのはあまりオススメできません。

 

4.その他の点検・調整

4−1.オートチョークバイメタル調整

チョークバルブの開度、作動時間を決めるのがチョークバイメタルです。普段はいじらない部分ですが、外してしまった時などでは以下のように調整します。

(エアクリーナケースを外した状態)

  1. チョークバイメタルの固定ビス3個を緩めます。
    (画像には固定ビスが2個しか写っていませんが、残りはバイメタルの下にあります)

  2. バイメタルにある基準線を目盛りの中央位置に合わせます。
    (画像では半目盛り分、開き側の位置にしています)

 

4−2.完爆ダイヤフラム作動点検

外気温度が低い時の暖機中、アイドル回転が安定せず、マフラから黒煙が出る事があります。使い込んだキャブに多いと言えるでしょう。この様な時はチョーク系統の一部である完爆機構が故障し、オーバチョークになっている可能性があります。

【機構の概要】

完爆機構はチョーク作動時、始動直後〜暖機完了間のチョークバルブ開度を適切に保つ装置です。構成部品は右図のように、完爆開度決定用ダイヤフラムとロッド、コネクティングロッドのみ。エンジンが始動して負圧が発生すると、チョークバルブを開き方向に引っ張ります。

チョークバイメタルと完爆ダイヤフラムの力が釣り合ってチョークバルブ開度が決定されます。このダイヤフラムが破れてしまうと、チョークバイメタルの閉じ方向に作用する力だけになるので、チョーク開度が閉じ過ぎてオーバーチョークとなってしまいます。

完爆ダイヤフラムはエンジン回転中は常時負圧が掛かっている為に、使い込んで来ると破れてしまいます。実際、破れているクルマは多いです。

ダイヤフラムが破れていると、常時バキューム漏れしている事になりますから、暖機中の不具合ばかりでなく、暖機後も加速不良、燃費不良が発生します。ただし、冷機〜暖機中の症状はかなりハデに出る割には、暖機後の症状はかなり微妙なレベルで、あまり体感は出来ない場合が大半です。一般的には「冷機時は調子悪いが、完全暖機後は治る」という部類になってしまいます。

修理単位は、右図の赤線で囲んだ範囲の“チョークチャンバASSY”。つまりチョーク周辺一式の部品設定しかなく、単品はありません。新品部品は大半が製廃です。しかし、ダイヤフラムは脱着は可能ですので、他のキャブから移植する事は可能です。

【点検方法】

作業は二人一組で行います。一人は車内でエンジンを掛ける人、もう一人はエンジンルーム内でチョークバルブの動きを確認する人。助手は前者です。

  1. 助手にエアクセルペダルを一回(冬場は2〜4回くらい)踏んでもらい、通常の始動の準備をします。
  2. エアクリーナケースの蓋を外し、チョークバルブが“閉”(夏季は全閉にはなりません)になった事を確認します。
  3. 助手にエンジンを始動してもらいます。
  4. クランキング→完爆時(エンジンが完全に掛かった時)、チョークバルブが以下の動きをするかを確認します。

4の結果、NGの場合(特に完爆時にチョークバルブが動かなかった時)は、完爆ダイヤフラムが破れて作用していない可能性があります。

 

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