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サーモスタット交換

難易度指数:2 比較的寿命は短いかも

エンジンに装着されたサーモスタットは、冷却水の温度を一定にするのが主な役割です。常温状態(冷機時)は全閉になっていて、冷却水は循環しません。水温が上がってくると、その温度に応じて弁が開き始め、ラジエータに冷却水が循環するようになります。

開き始める温度(開弁温度)はエンジンや使用環境(熱地、寒冷地など)、搭載ボディ等で幅がありますが、だいたい75℃〜90℃です。230のL型エンジンの場合は表1の通りです。なお、同じL型でも他車やセドグロでも330以降は組み合わせが変わりますので、安易な代用はせずに、各自検索をお願いします。

表1. 230用L20、L26のサーモスタット仕様一覧
部品番号 開弁温度(℃) 適用
21200-V0200 82 標準
21200-F3160 76.5 熱地/夏季用*
21200-V0205 88 寒冷地

*; パーツカタログ上は「夏季用」との記述がありますが、純正エアコンやファンカップリング付7枚ラジファン装着車では四季を通して82℃で構いません。

 

1. 不具合傾向

使い込んでくると不具合が出る訳ですが、以下のような現象が発生します。

表2. 不具合傾向一覧
不具合ケース 現象
暖機後でも開かないまたは開度小
  • オーバーヒート
低水温時でも全閉しない
暖機後の開度大
  • 暖機運転に時間が掛かる
  • オーバークール(暖機後、水温計が低い位置で安定する)
  • ヒーターの効きが悪い

この時代の日産車に採用されているサーモスタット不具合傾向は「開き過ぎ系」が多いと思います。オーバーヒート気味になるのを改善しようとして最初のステップでサーモスタットを交換して、全く解消せず、結局ラジエータ詰まりが原因・・・などは結構聞く話です。開くときに開かなくなるケースは殆ど遭遇しません。逆に、常温時に全閉しないとか、開き過ぎて水温計がイマイチ上がらないほうが圧倒的に多いです。でもオーバーヒートより異常を感じない方も多いようです。適温よりも低い(冷えすぎ)オーバークールもエンジンにダメージを与えますので、放置は禁物です。

幾ら暖機をしても下図のように水温計指針が中央に来ない状態で安定する場合、かなりの確率でサーモスタットに不具合があると思われます。


図1. 水温計が低めで安定するのはNG

正常なら図2のように指針が四季問わずだいたい真ん中で安定します。130(図3)や230前期では真ん中よりやや低温寄りに目盛りがある場合がありますが、それを多少(針2本分くらい)超えていても大丈夫です。230では水温計の「TEMP」の文字の「E」または「M」の上あたりならOKです。

適温の判断基準はアナログ式水温計ならどの車種でもだいたい同じで、スケールの中央付近で指針が安定するのが正常です。「XX車の水温計はどの辺で安定するのか?」という疑問が生じたら、そこは迷わず「真ん中」だと思ってください。多少バラツキがある場合は、中央基準でプラスマイナス指針2本分というところでしょうか。


図2. 暖機後の正常な水温計指針位置


図3. 130の水温計(中央付近に目盛りがある)

次は別の良否判断基準として、年数やキロ数ベースでの部品寿命時期を考えます。だいたい10年または10万キロかなと思います。これを超えたあたりで、先述のような現象が出た場合、「あぁ、そろそろダメか」と思いましょう。旧車の場合は距離が行っていなくても、前回交換から10年以上経過しているなら交換がオススメです。

 

2.交換方法

エンジンは必ず冷機状態で行います。暖機後は火傷する恐れアリ。

2-1. 冷却水抜き取り

冷却水は3〜5リットル程度抜きます。冷却水全量交換時の付帯作業でやるなら、ここですべて抜きます。


図4. 冷却水抜き取り

2-2. サーモスタット取り外し

サーモスタットはデスビのすぐ上あたりのハウジングの中に装着されています。12mmのソケットレンチでボルト2本を外します。


図5. 取り外し

ボルトを外した後は軽くショックを与えながらパッキンを剥がすと、カバーが外れます。カバーが外れるとサーモスタットは手で取れます。


図6. 右が旧部品、左が新品

2-3. ガスケット除去

熱が掛かる部位で紙製ガスケットなので、貼り付いており、綺麗には剥がれません(図6)。ハウジング側、カバー側両面ともにこびりついているので、スクレーパを使って綺麗に剥がします(図7)。この際、傷を付けないように注意が必要です。


図7. 古いガスケットが付着した状態


図8. スクレーパで仕上げる


図9. 仕上げ後のカバー側合わせ面

2-4. 新品サーモスタット、ガスケット装着 

交換部品はサーモスタットとガスケットが必要となります。サーモスタットは今回は社外品、ガスケットは自作しました。社外品サーモスタットにはガスケット付きのセット品もあります。

ガスケットについては紙製ガスケットですので、ガスケット紙またはボール紙でも代用できます。例では、ワイシャツを買ったときに入っていた型崩れ防止用のボール紙を切って自作しました。自作時は下図のように、合わせ面にボール紙を押し当てて、痕を付けます。


図10. ボール紙を押し当てる

その後に、押し当てた痕をなぞって切り取ります。サーモスタットが入る開口部とボルト穴の間は細いので、切り過ぎないよう注意が必要です。ボルト穴はピッタリサイズ(直径約8mm)、開口部はやや小さめが良いでしょう。

完成したガスケットはサーモスタットの後に装着します。サーモスタットは上下は絶対に間違えないようにしましょう。またL型は下図のような角度なので関係ありませんが、横向きに装着するタイプはジグルバルブ(小さい孔の開いたバルブまたはただの孔)が上になるように、前後・上下ともに注意しながら装着します。

ガスケットは漏れが怖いなら液体ガスケットを併用しても構いません。


図11. サーモ、ガスケット装着

表3. 使用部品一覧
部品名 品番 参考価格
サーモスタット(ミヤコ自動車) TS-225 \1,000くらい
ガスケット (純正の場合) 11062-S3001 \400くらい

2-5. 組み立て 

取り外しと逆の手順で組み立てます。ボルト2本を締めるだけです。ボルト穴に水分が残っている場合は完全に除去しましょう。ここに限った事ではありませんが、ボルトや穴が湿っていると、サビ固着(次回緩めるときにボルトが折れる)の原因になります。

2-6. 冷却水注入 

「2-1」で抜いた冷却水を再度注入します。抜いた水が5リットル未満であればエア抜きはほぼ不要です。

2-7. 試運転 

冷えた状態から暖機し、試運転します。冷却水の圧力が上がった(ラジエータホースが張った)状態になったら、分解箇所からの水漏れが無い事を確認します。そして 、水温計が「不具合傾向」でも触れた指針が中央位置で安定するかを確認して、問題なければ完了です。

 

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