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補機ベルト点検・交換

難易度指数:1〜2 点検は基本中の基本

230のL型エンジンには3本のVベルトが掛っています。

  1. ファンベルト:クランクプーリー/オルタネーター/ウォーターポンプ
  2. エアコンベルト(クーラーベルト、コンプレッサーベルトも同義):クランクプーリー/アイドラープーリー/コンプレッサ
  3. パワステベルト:アイドラープーリー/パワステポンプ

劣化や調整不良があるとベルトの滑りや切れが発生し、その部位によって波及する不具合も異なります。

【過度な緩み、ベルト切れ】

【過度な張り】

ベルトの緩みは調整不良以外に、ベルト自体の伸び(初期伸び、摩耗、劣化)が原因です。

ベルトに掛かる負担やサイズ等からエアコンベルトとパワステベルトはあまり不具合に至るケースが少ないように思います。一方ファンベルトは不具合が比較的多く、またオーバーヒートやバッテリ上りなど深刻な不具合に発展するため、定期的なメンテナンスが必要です。

 

表1. 230用L20、L26の補機ベルト一覧
部位 適用 メーカー 部品番号 *3 仕様/備考
ファンベルト*1
(直結ファン4枚羽根仕様)
前期 日産純正 11720-E3001 長さ:900mm 
バンドー化学 RAF2355 長さ:900mm 2FM型
中後期 日産純正 1720-P0300 長さ:915mm
三ツ星ベルト MPMF6350 長さ:890mm 6A型
バンドー化学 RAF3350 長さ:890mm 3A型
ファンベルト*1
(ファンカップリング7枚羽根仕様)
前期 日産純正 11720-E3010 長さ:870mm
PITWORK AY160-VM340 長さ:864mm
バンドー化学 RAF2340 長さ:864mm 2FM型
中後期 日産純正 11720-P0305 長さ:885mm
PITWORK AY16N-VH871 長さ:871mm
三ツ星ベルト MPMF6345 長さ:876mm 6A型
バンドー化学 RAF3345 長さ:876mm 3A型
エアコンベルト*2 ALL 日産純正 11920-P0301 長さ:1335mm
三ツ星ベルト REMF8520 長さ:1320mm 8B型
バンドー化学 HDPF5520 長さ:1320mm  5B型 コグベルト
パワステベルト 前期 日産純正 11750-E3001 長さ:700mm
バンドー化学 RAF3265 長さ:673mm 3A型
中後期 日産純正 11750-P0300 長さ:715mm
バンドー化学 RAF3270 長さ:685mm 3A型
アイドラーベルト*2
パワステ付かつエアコン無し専用)
ALL 日産純正 11921-E3000 長さ:1084mm
三ツ星ベルト REMF8420 長さ:1067mm 8B型
バンドー化学 HDPF5420 長さ:1067mm  5B型 コグベルト

*1: クーリングファンの仕様により、どちらかの選択になります。
*2: エアコン(クーラ)有無で、どちらかの選択になります。パワステ無し車にはどちらも使用しません。
*3: 部品番号は後対応番号に変更されている場合があります。特に日産純正部品番号は230生産時のもので、この後何回も変更されている場合があります。

〜〜 部品番号で長さが表示されている場合 〜〜

PITWORKとベルトメーカーの品番の下3桁は長さで、品物によってミリ表示、インチ表示があります。インチ表示が圧倒的に多いのでピンときませんが、1インチは25.4mmなので換算できます。

MPMF6345 ⇒ 34.5インチ = 34.5 x 25.4 ≒ 876mm

〜〜 ベルトの長さに関する考察 〜〜

上表では日産純正部品(PITWORKを含む)他に、各ベルトメーカーである三ツ星ベルト、バンドー化学の部品も掲載しました。純正品はほぼ全部(?)製廃になっていますがこの2社のいずれかで何とかなります。これらは社外品というより、純正品を生産しているサプライヤであり、自社ブランド扱いで発売されているものです。実質純正品と同等。日産純正部番から2社の適用品番への関連付けは少し調べると出てくるのですが、大抵長さが違います。傾向的に長さの関係は

日産純正(パーツカタログ記載の長さ) > PITWORK > ベルトメーカー自ブランド品

となっています。しかしパーツカタログに記載されている長さを信じると長すぎる傾向があることが判りました。部品番号で互換性のある番号を信じたほうが良いです。
また、オルタの容量をアップしている(80A以上)場合は、ノーマルオルタより本体ケース外径が大きく、エンジン側に寄せてもプーリ間隔が思ったより詰まらないので、少し長めがオススメです(ただし調整シロの関係で純正品の長さからプラス25mmを超えないほうがベター)。こう見ると、長さの選択肢は多少幅があります。

1. 点検

点検項目は3つ。張り具合と亀裂、摩耗です。1〜2年に一回は点検したいです。

注意!!
作業時は必ずエンジンは停止状態で実施してください!!

1-1. 張り点検

簡単です。押すだけ。と言ってもおおよそ決まりがあって、「10kgで押したときの撓みが約1cmであること」です。撓み量が多くても少なくてもNG。

ここで「10kgで押す」の感覚が判らないと思います。この場合、事前に体重計を使って指で10kgになるように押してみてください。これで手加減を覚えておいてから、現車で点検するとよいと思います。

エアコンベルトはプーリの間隔が長いので、自然と撓み量が大きくなります。「10kgで押して1cm」はやや張り過ぎ感もありますので、個人的には10kg3cmでもいいかなと思っています。あくまでも個人的意見・・・

もし撓み量が規定値から大きく外れる場合は調整が必要です。また、張り点検前に滑り音が発生してゴムが焼けるニオイまで発生させてしまった場合、張り点検で緩い状態でも基本的には張り調整ではなく要交換です。ベルトが熱劣化で傷んでいますので、張りが正常でも滑りやすかったり切れやすい可能性があります。

1-2. 亀裂点検

できれば外してやりたいですが、装着状態で目視点検をします。当たり前ですが切れかかっていたら即交換です。ベルトは輪にするために接合部があります。接合部は他の部位より弱いので劣化したベルトはそこが剥がれているケースもあります。装着状態でも亀裂が判るレベルなら早急に交換したいところです。

ベルトをプーリから外した状態で点検する場合は、装着状態とは逆側に反らせたときに亀裂が確認された場合は、劣化が進んでいて間もなく寿命と判断できます。

1-3. 摩耗点検

ベルトが摩耗して細くなると、プーリにどんどん食い込んでいきます。この現象はプーリが摩耗して溝が広くなった可能性もありますので、どちらが原因かは見極めが必要です。多走行車や長期間張り過ぎだった場合はプーリも怪しいとも。一般的には柔らかい材質のベルトが先に減っていきますので、@ベルトが緩くなった、A亀裂がある、Bプーリに食い込んできた、の3点該当なら交換で良いかと思います。ベルトが痩せてプーリに底突きすると、張りを適正にしてもベルトは滑ります。年数/キロ数での判断はベルトの仕様や年間走行キロにもよりますので、一概には言えません。

2.調整方法

注意!!
作業時は必ずエンジンは停止状態で実施してください!!

2-1. ファンベルト

ファンベルトの張りは、オルタネーターの固定位置で調整します。オルタネーターの固定ボルトは上部は1か所、下部は前後2か所です。


図4. オルタ上部前側


図4. オルタ下部前側


図4. オルタ下部後ろ側

 

作業手順

  1. この3本のボルトを一旦すべて緩めます(外さない)。そうするとオルタがエンジン寄りに動き、ベルトが緩みます。
  2. 次に張る準備。オルタ上部の固定ボルトにソケットレンチをセットしておきます。必要に応じてエクステンションバーで延長しておくほうがベターです。後は締め方向に作動するようにしてレンチを操作すればボルトが締まる状態にしておきます。
  3. タイヤレンチやバールのようなものをオルタ後方に差し込み(下図)、てこの原理でツールを引き、オルタをベルトの張り方向に「ギュッ」と引き出します。

    図4. オルタ後ろ側から
  4. 手順3の状態を維持しつつ、手順2でセットしたソケットレンチを操作してオルタ上部を締め込みます。この時、オルタを抉るツールはチカラを緩めずにオルタを張り方向に引きながらオルタ上部のボルトを締め込むようにします。抉るチカラ次第でファンベルトの張りが変わります。
  5. 手順3から維持しているオルタにツールを掛ける力は緩めます。手順4でオルタ上部のボルトが十分締まっていれば、ベルトのテンションは保持されています。
  6. 次にオルタ下側2本のボルトを締め込みます。
  7. ファンベルトの張り点検をします。張り過ぎも緩すぎもNGです。

2-2. エアコンベルト

エアコンベルトはアイドラープーリで調整します。ファンベルトより簡単です。このベルトは個人的にはあまり張り過ぎない(ちょい緩め)ほうが良いかと思います。とはいえ緩すぎるとバタついてファンプーリに当たるので要注意。

作業手順

  1. アイドラプーリの軸のナット(A)を緩めます(外さないで緩めるだけ)。

  2. 上部のボルト(B)を回転させるとアイドラプーリの位置が上下してベルトの張り調整ができます。
    ボルト右回転でプーリは上がります。
  3. 最後にナット(A)を締め込みます。
  4. 最後に張り点検をして、問題なければ終了します。

2-3. パワステベルト

パワステベルトはファンベルトと似た調整方法ですが、必ず事前にエアコンベルトの調整は済ませてから実施します。この順番が逆になると、パワステベルトの張り具合が狂います。このベルトもちょい緩めで大丈夫です。

作業手順

  1. パワステポンプの3か所(A〜C)のボルトを緩めて(外さない)ポンプが動く状態にします。


  2. 上部ボルト(A)にソケットレンチ等をセットして締め込む準備をします。
  3. ポンプをベルトの張る方向(右フェンダ側)に押し出しながら、「2」でセットしたレンチを締め込みます。
    パワステベルトの場合、負荷が小さい(あまり滑らない)ので、多少緩めで構いません。こればベアリング保護の目的もあります。ポンプは画像のように手押ししながら、ベルトを張る、で十分です。
  4. ポンプ下側のボルト2本(B,C)を締めます。
  5. 最後に張り点検をして、問題なければ終了します。

3. 交換

ベルトの交換時期はおおよそ7年/7万キロ毎が目安といわれています。ファンベルトは無理せず早目の交換がオススメ。旧車になると距離は伸びませんから、4〜5年毎くらいがよいかも。パワステベルト、エアコンベルトはもともと負荷がそれほど大きくない割に太いベルトなので結構頑張ってくれます(10〜15年程度)。交換方法は 調整方法がわかれば(できれば)交換は比較的簡単です。以下は注意点。

 

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