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日産車の車両型式

ヤフオクや掲示板などで、日産車の車両型式の書き方が間違っているのを良く見かけます。結構奥が深いので、触れてみたいと思います。

1.車両型式

まずはココから。「セドリック」とか「グロリア」といっても、モデルチェンジする毎にまったく形や機構が変わっています。年式なんかで言えば通じますが、車両型式で言えばかなり正確に表現することができます。

「セドリック」などと言うのは愛称名で、どちらかと言うと車両型式の方が重要です。修理の依頼、部品購入時等、クルマの突っ込んだ話をする時は絶対必要になります。

 

2.基本型式

車両型式の中でもそのモデル全体を指すモノで、「基本型式」と呼びます。型式表記の中でも最も重要な部分で、これ以上ハショれない最小単位です。鉄道車両で「○○系」とよく聞きますが、アレと似たようなものだと思います。

型式表示方法(採番基準)が1980年頃に改定されましたので、まずは改定前から。

2−1.改定前(1980年以前)

ベースは3桁で表示され、一部4桁もあります。

(1) 1桁目

フルモデルチェンジをすれば1ずつ増えます。初代は「0」からスタートになりますが、ゼロは付けずに非表示で、2桁で表示。例えば、

  30

と言うと初代セドで、これ以降は3桁となり

 130、230、330・・・

となります。

(2) 2桁目

車台(シャシ)の大きさを示す桁。数字が大きくなるほど大きな車台の車両と言うこと。

(3) 3桁目

ココは正確な事は知らないのですが、マイナーチェンジで機能面で大きな変更があり、旧運輸省に認証を取り直すほどの場合は、1ずつ増えてくようです。例えば、330セドグロでみるとこんな感じです。

330(50年排ガス規制車) → 331(51年排ガス規制車) → 332(53年排ガス規制車)

 

以上が基本型式の基本形。

しかし、これだと同じ車格のクルマが複数ある場合は型式がダブってしまい、どれを指すのか分からなくなってしまいます。1965年頃から車種が増えてこの問題が発生しました。そこで3桁の更に頭にもう1桁アルファベット記号を追加して4桁表示とします。

B10(サニー)、C10(ハコスカ)、C30(ローレル)、A30(タテグロ)、S30(フェアレディZ)

これらは一見3桁ですが、初代扱いの表示の為、本来の1桁目は非表示になり詰められています。だから桁を意識しながら“B10”サニーを書くと、“B 10”になるのが本当です。普通は空けませんけど。

基本型式は数字3桁が基本形ですが、アルファベット1桁+数字3桁の計4桁となる車両は結構あります。上記の例1は基本形の1桁目がなかった例ですが、タテグロ以外のモデル(タテグロの次は230に統合になった為、消滅)はフルモデルチェンジで例2のように表記します。

B110(サニー)、C110(ケンメリ)、C130(ローレル)、S130(フェアレディZ)

これらは4桁になってしまいますが、基本型式で最小単位ですから、これ以上はハショれません。つまり、“B110”サニーを“110”と言ったり、“C130”ローレルを“130”と呼んではNG。しかしコレ、結構見かけませんか? 例えば人と話していて、“230”と言っていたので、てっきりセドグロ“230”かと思っていたら、何となく話が変。問いただすと、“C230”ローレルの事でした・・・ “130”とつくモデルも“130”だけならセドしかありません。2代目のZは“S130”、2代目ローレルは“C130”です。
実は型式の話で一番言いたいのはココだったんです(笑) どれが3桁で、どれが4桁でないとダメなのかは覚えるしかありませんけど・・・
と言う事で、ココをご覧の皆さんはくれぐれも気をつけてましょう^_^;

2−2.改定後(1980年以降)

1979年登場のブルーバードは“910”になり、「オイオイ次はどうすんの? “1010”かよ」と言う状態になっていました。といってもコレが引き金になったのではなく、どうやら1979年に発行されたISO3779、1980年に発行されたISO3780、ともにVIN(Vehicle Identification Number=車両識別番号)という国際規格(海外向け車両用の車台番号に使用)と互換性を持たせる目的で社内の採番ルールを改定したようです。
トップはキャラバン/ホーミーの“E23”(1980年8月)から。追ってレパード“F30”、ローレル“C31”と続きました。
もうお分かりかと思いますが、従来は数字3桁が基本だったのを、英文字1桁+数字2桁で表記されるようになりました。

Y30 (セド/グロ)

これはご存知の通り“430”の次のモデル。83年6月に登場となったので、“530”とはならず“Y30”となりました。

(1) 1桁目

英字であれば特に法則はない(といっても"I"や"O"などは避ける)ようです。必ず英文字で、他の型式とカブらない範囲で採番されます。

C35 (ローレル)

(2) 2桁目

旧表記の2桁目と同じです。

(3) 3桁目

旧表記の1桁目と同じ意味です。つまり新設時は「0」(旧表記のように「0」でも省略はしない)、モデルチェンジで「1」、「2」と進んでいきます。

R30 → R31 → R32 → R33 

また、新設時に既存の型式と重複してしまうものは、「0」以外からスタートします。例としてティーダの“C11”。旧表記ながら“C10”はハコスカで使っているので、これを避けています。

これで同車格のクルマでもダブる事がなくなるので、“230”がセドグロで“C230”がローレルみたいに3桁だったり4桁だったりと言う事がなくなりました・・・

ところが、これでも3桁表示では問題発生。
1988年に登場したシーマからだったと思いますが、シャーシなど基本部分は同じで違う車種が派生した場合、基本型式が変わらない車両が出てきました。例えば、シーマ(Y33系以前)、プレジデント(G50系)、ステージア(初代)、レグラス etc
これらのベース車を見ると、

これらの基本型式はベース車と同じです。でも違いが欲しいですよね。特に初代ステージアと7代目ローレルなんて、同じ基本型式:C34では反則だと思うほどです。ローレルワゴンがステージアと言う位置付けなのでしょう。
これらは、型式表記のきちんとした決まり事からは外れるようですが便宜上、基本型式3桁の更に上に英字を追加して4桁表示をするようになりました。

頭の英字1桁目はなくても間違いではありません。しかしこのように派生(車台が共通)した車種は4桁で表記される事が多いです。あくまでも便宜上。
この1桁目の記号は、傾向的には届出記号1桁目(排ガス規制の桁の後ろ)をそのまま持ってくる事が多いようです。

FY32の届出記号: E-FGY32

マメ知識: 「SY31」って?

Y31でも、1991年ビッグマイナチェンジ以降のY31セダンを限定した標記です。上に書いた派生車種とは、若干状況が異なりますが、これも便宜上4桁表記したモノです。しかも、日産から出ている資料で「SY31」と言っているのはパーツカタログ(FAST等)のみ。整備要領書、新型車解説書等では一切出てきません。どうやら、日産でも部品部が独自に設定しただけの型式のようです。整備要領書、新型車解説書はサービス部なので、どの部署が発行した資料なのかで表記が異なっています。ディーラで「SY31」と言っても、理解してもらえない事も。

 

3.届出記号と社内記号

「セドリック」の「130」は「H130」と呼ぶ事もありますよね。「H」って何? 「H」は付けちゃいけないの? 次はこの辺に触れてみます。ヒントは届出記号と社内記号。

1980年以前の基本型式で話をすると、数字3桁か英文字1桁+数字3桁の計4桁で表記されます。基本型式は型式の最小単位なので、これ以上は分解できません。また、どのモデルが3or4桁かは一つずつ覚えるしかありません。車両型式は、この基本型式の前後に更に記号(英字や数字)をつけて、更に詳しく表記します。これが届出記号と社内記号です。

それぞれの使用目的は後で述べますが、これがすべて判ると、エンジンやボディータイプ、グレードなど詳しい仕様が判るのです。

例えばこの章の冒頭に書いた「H130」と言うのは、130の中でもL20エンジン搭載車の意味があります。
また、C130ローレルの中に「KHC130」と言う型式がありますが、「K」はボディーがHT、「H」はL20エンジンと言う意味があります。

どの記号にどう言う意味があるかは、モデルそれぞれ違っている場合があり、折角覚えても他車では使えなかったするので注意が必要。
例えば「H230」の「H」は、L26エンジン搭載の230の事で、C130130とは使用方法が違います。

また、ベースになる仕様は記号がつかないモノが多いです。

このように、基本型式の前後に記号がつくと、その車系でも限定した表現となります。これ以上はモデル毎に資料で確認した方が理解しやすいですね。「サービス周報」等の日産のサービス資料に載っています。

【届出記号と社内記号の使い分け】

  1. 届出記号(届出型式)

どのクルマも国土交通省(旧 運輸省)に型式の届出をするのですが、それがコレです。一般に車検証に書かれた型式に相当。実際はもっと沢山の記号を後ろに付き、10桁くらいにはなるのですが、あまりお目に掛かる事はありません。普通は初めの1〜3桁の英字+基本型式

  1. 社内記号(社内型式)

日産社内で使われる型式で、新車をメーカに発注する時、ディーラ等で使う型式がコレです。日産外ではあまり関係ないかもしれませんが、エンジンやミッションなど細かい仕様が表示されているので、特に1991年以降の車両はこれをディーラに伝えると何かと話が早いです。
これらは沢山の記号や数字を組み合わせて表示しており、長いものは18桁で表示されます。

 

マメ知識: 排ガス規制表記

届出記号は排ガス規制適合を示す記号がつきます。適用は50年規制以降からで、例えば

A-P330

の「A-」の部分がそれです。48年規制以前は非表示となります。最近は「GF-」のように桁が増えました。

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