クルマに不具合があった場合、解消させるまでには一定の手順があります。一つひとつの工程はどれも重要で、飛ばす事はできません。特に修理作業の手前には「故障診断」という工程があり、これを知らないまま着手すると直らない、というハメに。ここでは不具合発生から修理完了までの工程を、主に故障診断にフォーカスを当てながら一つずつ解説します。
故障診断は、刑事ドラマの捜査ストーリーにも似ています。某旧車雑誌で「修理は推理だ」という連載があったと記憶していますが、ドンピシャ合致します。管理人自身は日産整備士1級を取得する時に習った項目です。
また、本ページではクルマの不具合を題材にしていますが、考え方は機械関係全般、その他あらゆる問題解決の基本とも言えます。
故障診断工程 |
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修理作業工程 |
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*: 当サイトの掲示板でフォローできる項目
最初のステップとして不具合状況を整理しながら把握します。刑事ドラマで言うと、事件現場での遺留品捜索、聞き込みでしょうか。当サイトの掲示板で不具合相談を行う場合も、最初に皆さんに書いていただくはこの項目です。
単純に「エンジンが掛からない」だけでは全く足りません。何が起きたのか理論的に把握するために「いつから」「どんなときに」「どうすると」「どうなる」というような感じで整理しましょう。俗に言う「4W1Hの法則(When、Where、Who、What、How)」とほぼ同じ。報告の基本として、よく紹介される手法のアレです。
例えば「エンジンが掛からない」という不具合の場合は・・・
という具合に。
逆にどうすれば(どういうときならば)解消するのか、も把握できればベスト。例えば、「一晩経てば一発始動はできる」「不具合発生時は何度もクランキングをすれば、ブスつきながらも始動できる」など。
このステップでは事実だけを纏めます。推測などの余計な考えはせずに、事実を挙げていきます。
「2-1」で得られた情報から、理論的に推測し仮説を立てます。考えられることは多ければ多いほど良いです。刑事ドラマで言うと、刑事部屋(事務所)の黒板に容疑者の名前を書いて方針会議をする場面に相当します。
当サイトの掲示板で不具合相談をいただいた場合、管理人がレスするのはこのステップ。
あくまでも推測です。理論に基づいていますが、「決め手」がないのですぐに行動(修理工程)には移りません。次はその「決め手」を探す工程なので。また、仮説が幾つかある場合は優先順位を付けます。点検しやすい箇所、傾向的不具合、消耗品が怪しい、などの場合は優先順位を上げます。
「2-2」で仮説を立てたらホントにそうなのか、仮説に沿って「決め手」探しの点検をします。分解してみて摩耗が無いか、電気系統なら電圧や抵抗を計測したり、焼損が無いかなど。
またまた刑事ドラマで例えると、アリバイ調査や、血液反応調査、任意での事情聴取とか・・・ ここで物的証拠や自供など判断材料が揃わなければ逮捕はしません。逮捕できる材料が揃わず、捜査に行き詰ったときは、もう一度事件現場に出向いたりします(笑) 故障診断も全く同じ。このステップできちんとNG箇所が発見できなければ、次のステップへは進まず、「2-1」「2-2」からやり直します。
このステップはアマチュアの方では省略されてしまう事が多いです。だから一発で直らないとも言えます。消耗品などで「一旦交換してみないと分からい」というケースもあるので、そういうときのみ交換作業に入ります。予備部品があるときも、「交換してみる」はアリかもしれません。しかしあくまでも故障診断の一環だと考えるべきです。
当掲示板では「2-2」で方針のアドバイスまでは可能ですが、「2-3」ではせいぜい確認の仕方や判定基準のお話しかできません。実際に良否判定はご自身もしくは整備工場等での現車調査で判断します。
一般的にクルマなどの機械モノの場合は以下のようになります。
【修理方法】
【部品調達】
修理費用、工数、入手難易度、作業難易度、その部品またはクルマの残りの使用期間などから判断します。
特に最近は純正新品の製廃で入手できずに躓くケースも増えています。修理部品の調達も上記の組み合わせで数パターンあるハズですので、現実的なのはどれかを調査します。
「2-4」の方針に従って修理作業をします。
特に機能面での不具合の場合は必ず作動を確認します。場合によっては違う条件で違う不具合が出る場合もあるので、慎重に。
クルマ系のサイトであまりこの手の話題に触れた記述を見かけないので、あえて作成しました。プロの世界でも故障診断ができる人とできない人で役割が変わってきます。その人の経験則などノウハウが生きてくる部分でもありますが、ノウハウがなくても理屈をしっかり押さえておけばアマチュアでも可能です。当サイトではそのお手伝いをしています。
不具合発生時は不安がつきまといます。しかし、落ち着いて理論的に進めれば原因は見えてくるので、参考にしてみてはいかがでしょうか。