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セドリック/グロリア230(ニーサンマル)とは

ご存知ない方のために、簡単なご説明を致します。ご存知な方もご覧下さい。クレームも受け付けます(笑)。

1. 概要

1971年(昭和46年)〜1975(昭和50年)に製造されたシリーズ。型式は230。それまではセドリックとグロリアは別々の型式を名乗っていましたが、日産・旧プリンスの車種構成の総合整理で、基本構造を統一しグリルなどの外装の仕様を若干変更して2系列となりました。

2. 車種構成

法人需要がメインなので前モデルまではセダンのみでしたが、「多様化するユーザーの嗜好」にも対応するためにハードトップ(以下HT)の設定もありました。一時期大ブームとなった4ドアHT、実は230からの登場です。しかし当初は2ドアHTからでした。でもなぜ2ドア? クラウンには設定があり、イメージリーダーとしてそこそこの実績があったということと、4ドアHTは当時はまだ技術的に問題があったのでしょう。HTシリーズの追加と言うかたちで4ドアが登場するのはセダン、2ドアHT等がマイナーチェンジしたあとの1972年8月。「国産初の・・・」という宣伝文句が必ずアタマにくっついていたようです。センターピラーがなく、リヤドアガラスが全開になる4ドアHTは開放感満点。

230の車種構成で変わっているのは、2600ccのバリエーションの多さ。普通なら3ナンバー車は最上級車だけとなるところを、なぜか230では3ナンバーの廉価版のDX系、更にはバンまで2600(貨物なので1ナンバー)の設定があったのです。どう考えてもムダにしか見えないこの構成! でもバン2600なんて発想は好きです(笑) 私も一度だけ見たことがありますが、エンジンを載せ替えたカイゾー車かと思いました。これらあまり売れそうにない車種たちは330以降みんな淘汰されてしまいました。





 

2000シリーズ
ボディー仕様 グ  レ  ー  ド
セダン  スタンダード、 DX、 カスタムDX*1、 スーパーDX*2、 GL、 GX 
 2ドアHT   DX、 スーパーDX*1、GL、 GX
 4ドアHT*1(72.8〜)   カスタムDX*1、 GL
 バン・ワゴン   バンスタンダード、 バンDX、 ワゴン(セドのみ)
*1: セドリック系ではカスタムDX-Lも有
*2: 1972年6月に廃止(前期型まで)
2600シリーズ
ボディー仕様 グ  レ  ー  ド
 セダン   DX、  カスタムDX、 GX 
 2ドアHT   DX、  GX
 4ドアHT(72.8〜)   カスタムDX、 GX
 バン   バンDX(73.4〜)

年式的な切り分け、つまりマイナーチェンジを境にした仕様変更を見ると以下のようになります。

変更年月* 便宜上の呼び名 主な変更内容
1971.2 前期 (新設)
1971.10 2600GX追加
1972.6 2600カスタムDX追加
1972.7 中期 フロントグリル、リヤフィニッシャ意匠変更、グレード構成変更、GXのハイオク仕様廃止、GXの5MT採用等
1972.8 4HT追加
1973.4 後期 昭和48年排ガス規制適合、リーフスプリング仕様変更(スタンダード以外のセダン、HT)
2600系の外装変更、バン2600DX追加
1975.2 法規対応(STD系デフロスタ標準装備化、シートベルト仕様変更等)
*: 生産年月で見ると、数週間先行してラインオフしている場合がある

3. エンジン

主力は有名なL20型でシングルキャブとSUツインキャブ、LPGの3タイプ、2600シリーズ用として新設計のL26(シングルキャブのみ)の他、スタンダード用として4気筒のH20(LPGもあり)、ディーゼル4気筒のSD20もありました。

昭和48年4月(1973年4月)、「昭和48年排ガス規制」に対応しました。エンジン本体ではシリンダヘッド周り、INマニ、キャブ、デスビ、燃料タンクなどが変更されています。

エンジン型式 搭載車種 燃料
L26 2600全車 レギュラーガソリン*1
L20(SUツインキャブ) 2000GX 130馬力仕様:ハイオクガソリン*1*2
125馬力仕様:レギュラーガソリン*1
L20(シングルキャブ) DX カスタムDX スーパーDX GL  レギュラーガソリン*1
L20(LPG) DX カスタムDX (共に営業車) LPG
H20(ガソリン/LPG) スタンダード レギュラーガソリン*1/LPG
SD20    ↑ 軽油
*1: 1972年3月頃まで有鉛ガソリン仕様(詳細は「ウンチク資料集 有鉛ガソリン仕様について」を参照)。
*2: 1973年4月のマイナーチェンジで廃止。

4. シャシー

シャシーは当時としては最もオーソドックスなもの。大半は130型セドリックの仕様を踏襲していますが、230になってほぼ全部位でネジ類メートル化が行われています(それまではインチネジ)。これは部品形状、寸法は同じなのに、ネジ径・ピッチが合わない、という事になり、互換性があまりありません。また、この後の330系もほぼ同じ仕様で引き継がれますが、排ガス対策機器増設による車重増で細部が大型化され異なります。

仕様での変り種はブレーキのGバルブでしょうか。ブレーキング時、車輛の減速度を感知してリヤのブレーキの制動力を押さえる働きをします。130から使われていましたが、330でPバルブに変更されました。また電子制御A/TやABS(まだ二輪式)もこの時初めて採用されました。

パワステも130で採用されたシステムを継続採用しています(ただしここでもネジが違う)。リンケージ型と言うタイプで、比較的後付けしやすいシステムです。GX、GLに標準装備、セダン、HT系はDX系にもラインオプション設定となっていました(後期のセドリックカスタムDX-L、同グロリアのカスタムDXは標準装備)。

部 位 仕様
サス フロント:Wウィッシュボーン、 リヤ:リーフリジット
ミッション MT:コラム3速(R3W71A or B)、4速(R4W71A or B)、3速+OD(RS4W71A or B)
フロア4速(F4W71A or B)、5速(FS5C71B)(72年7月〜)
AT:フロア/コラム3速(3N71B)(電子制御式E3N71Bが2600GXにOP)
デフ H190型(歯数比:仕様により3.889  4.111  4.375  4.625の4通り)
ステアリング リサーキュレーティングボール式、   リンケージ型パワーステアリング(GX、GL系に標準)
ブレーキ フロント: ディスク(STDのみドラム)、   リヤ: ドラム
制御装置:Gバルブ(スーパーDX、GL、GXに標準)、 リヤABS+Pバルブ(2600GXにOP)
タイヤ・ホイール

タイヤサイズ: 6.95-14-4PR(セダンDX〜)、6.95-14-6PR(ワゴン)、6.40-14-4PR(STD)、6.40-14-6PRLT(バン系)
※ 2000GX、2600系はSタイヤ(=速度記号:180km/hの意味でリボン仕様:ダブルリボン)
※ ホワイトリボンタイヤが標準だったのは1973年10頃まで
※ HT系のオプションでラジアルタイヤ設定有・・・175SR14(現代での規格表記にすると175/82R14)

ホイール:
5J-14 オフセット40mm(6.95-14タイヤ用)、4.5J-14 オフセット40mm(6.40-14タイヤ用)

5. その他の仕様・装備

5-1. ウィンカ(フラッシャ:方向指示器)

230の生産期間中、法改正もあり途中で仕様が変更されました。主なところでは法改正にて1973年12月からは、方向指示器の灯色が橙色限定が義務化された事です。それまで日産車は主にリヤランプはブレーキランプ(制動灯)やテールランプ(尾灯)と兼用の赤色で点滅する仕様を多く採用しており230もそうだった為、段階的に変更されました。ちょっと注意が必要なのは、「セダン」と「HT&バン&ワゴン系」で変更時期が異なる事。下記に年式とボディータイプ別のウィンカ灯色と変更時期を纏めます。

年式・ボディータイプ別ウィンカ灯色一覧
ボデータイプ 採用期間 フロント側灯色 リヤ側灯色 備考
セダン 1971.2 - 1972.6 橙(レンズ:白、電球:橙の色電球) 赤(テール、ブレーキ兼用)* 前期
1972.7 - 1973.3 中期
1973.4 - 1974.6 橙(独立) 後期
1974.7 - 1975.5 橙(レンズ:橙)
HT、バン、ワゴン 1971.2 - 1972.6 橙(レンズ:白、電球:橙の色電球) 赤(テール、ブレーキ兼用)* 前期
1972.7 - 1973.3 橙(独立) 中期
1973.4 - 1974.6 後期
1974.7 - 1975.5 橙(レンズ:橙).
*: シーケンシャル式がHTのGXには標準、HTのGL、DX、セダンGX〜DXにはオプションで設定

5-2. エアコン

日産車初のバキューム制御式カーエアコン(リヒートエアミックス式マニュアルエアコン・日立製)が採用されました。従来は、ヒータ、クーラなど単一機能での装置だったのが四季問わず1システム内で制御することとなり、特に除湿暖房が使用できるようになるのがポイント。設定はスタンダード以外全車にありますが、時代的にGXも含めて標準装備ではなく、オプション。しかも、ラインオプション、ディーラーオプション両方あり、全く同じ製品。どちらのオプションかは見分けが比較的困難です。

230の純正エアコンは冷房能力はかなり高く、「寒い」という苦情があったとか。

エアコン以外にはトランクタイプクーラも設定があるのが当時の高級車らしいところ。こちらは130時代とほぼ同じ。

5-3. フロントガラス

固定方法が「日産初」となります。従来はウェザーストリップという断面がH字型のゴムを挟んで固定するのが常識でしたが、接着剤でガラスをボディーに接着する「接着式」となりました。230ではフロントのみが採用されます。以降、フロント、リヤガラスの固定方式は接着式が一般化していきます。ただし、当時の接着剤は耐久性がなく、雨漏りの不具合が多発します。加えて接着部位周辺のサビも多発するようになり、230最大の弱点とも言われるようになります。

5-4. リモコンミラー

リモコン式アウトサイドミラーのはしりです。230(GX、GL)と150プレジデントに採用されました。ただし、電動ではなくワイヤ式です。3本のワイヤが鏡面裏側から室内のスティック型ノブまで繋がっていて、操り人形のような仕組みで鏡面が動きます。
微調整という面ではワイヤ式でもリモコン機能の有無で操作性は格段に向上します。左右でワイヤ長さや取り回しが異なる為、操作感覚にバラツキがあり、どうしてもオモチャ臭さが拭えませんが、同時期の250プレジデントにも拡大採用され、330セドグロへも継続されます。そして331セドグロ、251プレジで電動化します。

5-5. テールランプモニタ

テールランプやブレーキランプの球切れ確認用のモニタ(GX、GLに装備)。これも230がお初。230以外にはリモコンミラー同様、次期型の330系と250系プレジデントに採用されています。構造は至ってシンプルで、テールランプハウジング内から極細の光学繊維(光ファイバー)でモニタ部まで光を導き、ミラー越しに光を確認できます。ブレーキランプ、テールランプの明暗もそのまま確認可能で、前期の赤テール車ではウィンカの点滅も確認できます。ただし、光るといっても光ファイバーの発光はかなり暗いので、夜間専用。日中での認識はとても困難です。

5-6. シーケンシャルフラッシャ(シーケンシャルウィンカ)

510ブルーバードクーペに採用されていたものを230でも採用されました(ただし部品は共通ではなかったと思う)。2ドアGXには標準装備、2ドアHTのGL、DX、セダンGX〜DXにはオプションとなっています。前述のウィンカーで述べた通り前期の赤テールの時代の話で、独立式の灯色が橙になった時点で廃止されます。

純正シーケンシャルフラッシャユニットの構造は、オプション仕様も含めてモータ駆動のカム軸に連動した機械接点を順にON-OFFさせて3連のリヤテールランプを順に点滅させる、というもの。赤テール車用の為、ブレーキ回路との切り替えもこのユニット内で行われるので、多数のリレー接点が存在します(故に壊れやすい)。ユニットは右リヤピラー下部(トランクヒンジ付近)に取り付けられていました。

シーケンシャルフラッシャの点灯例
操作(スイッチ) ランプ挙動
ウィンカーSW ブレーキ ハザード ライト
(含、スモール)
右にON OFF OFF OFF 右ランプ(3灯): 流れ点滅
左ランプ(3灯): 消灯
右にON ON OFF OFF 右ランプ(3灯): 流れ点滅(ウィンカ)
左ランプ(3灯): 点灯(ブレーキ)
OFF ON ON OFF 両ランプ外側: 点滅(ハザード)*
両ランプ内側/中央: 点灯(ブレーキ)
右にON OFF OFF ON 右ランプ(3灯): 明暗の流れ点滅(ウィンカ<-->テール)
左ランプ(3灯): 暗点灯(テール)
OFF OFF ON ON 両ランプ外側: 明暗の点滅(ハザード<-->テール)*
両ランプ内側/中央: 暗点灯(テール)
*; この状態では流れ点滅はしない

なお、上述の通りセダン、HT系GL以下はオプションで、特にセダンについては装着率は限りなく低かったと思われます。4ドアHTは全車独立フラッシャは採用されていた為、設定自体ありません。しかし、このシーケンシャルフラッシャを装着したセダン等がネット動画にアップされています。2000年頃、前期230ユーザーで自作ながら品質の高い電子式シーケンシャルフラッシャユニットを開発された方がおり、一時期は量産して販売もされた事からこの製品を装着した車両が少数ながら存在します。ネット動画はほぼ100%このケースで、管理人自身も2個所有しています。実はこの電子式は純正品より高機能で、フラッシャ作動時のみテールランプを自動OFFするなどの視認性向上アイテムが盛り込まれています。その他点滅の仕方に若干の特徴が見られ、純正品か後発の電子式かは、これらの挙動を見れば判別ができます。

6. 販売面

競合車種はもちろんトヨタのクラウンです。この時期のクラウンはMS60系でいわゆる「クジラクラウン」というモデル。スタイルが前衛的なところが仇となり保守層から総スカン(?)を喰らってしまい、販売面で苦戦します。一方セドリック/グロリア連合軍は、ボディーデザインは当時流行のコークボトルラインを採用しつつも130セドリックから流れを組む、比較的オーソドックスなスタイルであったことから、保守層を中心とするユーザーはセドグロに飛びつきます。しかも2ドアHTに続き4ドアHTの発売で、法人ユーザーのみでなく個人ユーザーにも好評をもって迎えられます。結果セドグロはクラウンに対して大勝した、というお話はとても有名。
当時営業マンをやられていた方から聞いた話では、「230はネェ、お客さんが買いに来たんだよ。だから、いちいち売りに回らなくても販売目標を達成できちゃう。当時のモーター系は『花のモーター系』と言われて鼻が高かったヨ。」とか。
当時の日産の販売チャンネルはモーター系(セドリック)とプリンス系(グロリア)が基本。高度経済成長の最後の年の1973年に販売台数のピークを迎えます。

また1975年6月には330型へバトンタッチしますが、当時は排ガス規制の煽りをまともに喰らってしまい、NAPS(NISSAN Anti-Pollution System)で乗り切るも「パワーが無い」、「燃費が悪い」などの評判で販売台数は伸び悩みます。当時230は中古車として流通していたのですが、新車の330より排ガス規制前の230のほうが動力性能、燃費性能が良い、との事で中古車市場でも人気がありました。
このように販売面では新車、中古車とも大成功をおさめました。デザインや車種構成のみならず、競合車や世相などあらゆる面で運に恵まれたモデルだったのかもしれません。

 

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