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ECCSで点火制御

難易度指数:4 作業自体はそれ程難しくはありませんが・・・

1.目的

目的って特にはありません(笑)  いや前々から考えてはおりました。でもイマイチやる気というか自信がなかった、更に部品の流用に問題があった為ノビノビになっていました。
その後某社よりEG○Sが発売され、いよいよ尻に火がつきました。 

ECCS(*)による点火時期制御と従来のポイント式&機械制御の相違点は次の様になります。

項目 ECCS * ポイント&機械式
制御範囲 広い 狭い
制御特性1

コントロールユニットに記憶されている進角マップに従がい、きめこまやかな制御特性

機械式ガバナとバキュームダイヤフラムによる大雑把かつ段付きのある制御特性

制御特性2 低速から高速まで高精度

高速時はポイントのチャタリングが発生し、点火時期の正確さが欠ける

始動時の点火時期

クランキングが遅い時のみ遅角してクランキング速度の低下(ケッチン)を防止

制御なし(=イニシャルの点火時期のまま)
二次電圧 (火花が飛び易い) (火花が飛びにくい)
点火エネルギー 常に最適な点火エネルギーになるように制御
(通電角制御)
低回転:過多   高回転:過少
保守 メンテナンスフリー 定期的にポイントのメンテナンスが必要
故障時 コントロールユニットの自己診断が出来る
  応急処置では復活しにくい
ポイントはごまかし修理可能(笑)

 

* : ECCS

日産車のエンジンをコンピュータで集中制御する方式。点火時期制御の他、燃料噴射量制御、アイドル回転数制御、故障時の自己診断機能、バックアップ機能などがあり、燃費・出力向上、排ガス低減の両立を図ることが出来る。
最初に採用されたのは430セドグロのEGI車からで、内容は進化しているが現在でも電子燃料噴射装置付きガソリンエンジンでは全車に採用されている制御方式である。
今回は点火時期制御の部分のみを230に使用した。

ポイント式が勝つのは最後の「ごまかしが効く」くらいでしょうか? これはなかなか捨てたものではありませんが、今時、これが怖くては車に乗っていられないのもありますね〜^^;

ま、利点がこれだけあるので、「やる価値あり」と判断しました。

 

2.部品の選定

基本的には80年代半ばのシステムしか流用できません。L型エンジンって基本設計は60年代のものですから(苦笑)
ECCS化に際し、クランク角センサ(クラセン)・エンジンコントロールモジュール(=ECM)は最低限必要な部品です。これに加えて、小型高性能の閉磁路タイプのイグニッションコイルも採用しました。
まず、クラセンはエンジンの都合上、手っ取り早いのは430最終型に採用された、光電式クラセン内臓デストリビュータ(デスビ)を流用します(同時期C31ローレルなどは電磁式というタイプですが、これでも流用できると思われます)。 ただこれにも問題が・・・ デスビを駆動するシャフトとの勘合部の形状がそのままでは合いません。これをクリアする方法は2つ。
1.エンジン側のデスビ駆動シャフト(ドライブスピンドル)を430用に変更する。
2.デスビ側のシャフトを変更する。
ある所でいろいろ部品をあさっていたら、4気筒用のクラセン(しかも新品)を発見。しかも勘合部は230のと同形状でしたので、コイツと430デスビを“ニコイチ”にして、↑の2番のやり方でクリアました。しかし、結局4気筒用は何のエンジン用なのかは分からず終いでした。一般的なのは1番のドライブスピンドルの変更でしょう。


エンジン側は無変更で済むようにデスビシャフトを変更


本来の430最終型用デスビの駆動シャフト


ドライブスピンドルとはこんな部品

 

ECMは6気筒用、タイレクトイグニッションではないタイプ(デスビがあるタイプ)なら殆ど使えるとは思いますが、今回はC32ローレルRB20エンジン用、そしてイグニッションコイルはパワートランジスタ(パワトラ)もセットでついているY30用を使用します。

 

3.取付け その1

まず初めにECMの入出力信号は以下の通りです。

<入力信号>
電源・I/G信号・クラセン信号・スタート信号・水温信号・点火一次信号

<出力信号>
点火信号(パワトラ駆動信号)

これを配線します。本当はすべての入出力信号が欲しいところですが、とりあえず今回はこれだけにしました。

そして、これを踏まえてリレー、ECMの配置を決めハーネスの作成&取り付けをします。
今回の場合は、リレーはエンジンルームバッテリー付近、ECMは置き場所がなく、仕方なしに助手席床に転がしておくことにしました(笑)


ECCSリレー


ECM

4.取付け その2

電源の取りだしを行います。常時電源が取れるところならどこでも良いですが、信頼できる箇所にしたいものです。実験車では、ヒュージブルリンクの空き端子に↑のようなハーネスを作り取り付けました。
そしてこれはリレーを経由して、ECMに向かいます。

 

5.取付け その3

I/G信号(I/Gオンで12V掛かる)は電磁ポンプ電源から分岐して取りました。

また、スタート信号(クランキング中のみ12Vが掛かる)はスタータの“S端子”から取りました。

これらもすべてECMに向かいます。

なお、この2つの信号は、キースイッチからでも良いと思います。

6.取付け その4

クラセンの信号線の取り付けですが、その前に信号線のお話しです。
クラセン信号はECCSでは要となる信号なのですが、非常にデリケート。電気(電波)的な外乱による影響を受けやすいので、普通のハーネスでは役不足です。そこで、4芯のシールド線を使用します。テレビのアンテナ線で、アミアミのアース線の中に1本の線が入っているのをご覧になったことがあるかと思いますが、あれです。同軸ケーブルなんかとも言いますね。あれで中の線が4本入っているヤツを使います。
また、外側のアミアミの線は必ずアースさせないと効果がありません。

このハーネスにクラセンと合うコネクタを付けて、エンジンルーム(あまり熱の影響が少ない部位を選んで)に沿わせます。

 

7.取付け その5

配線のラストはイグニッションコイル〜ECM間です。イグニッションコイルにはパワトラも一緒についています。Y30用のコイルを使用した理由はここにあります。
ECMへ行く線は2本。パワトラベース信号(パワトラへ送るON-OFF信号)と点火一次信号(点火信号をECMにフィードバックする)です。
更に、イグニッションコイルに供給する電源も必要です。これは従来使用していたイグニッションコイルの+端子を使います。尚、純正の電流検出型タコメータ装着車は必ずこの端子は使用しないと、タコメータが作動しなくなります。
 

 

8.取付け その6

いよいよデスビの交換。まずは予め、1番シリンダを圧縮上死点に合わせておきます。
・元のデスビは台座の部分から取り外します。(画像左下)
・エンジン側の取り付け部のガスケットを取り除きます。(画像右下)
・そしてクラセン内臓デスビを取り付けます。
とりあえずこの時点では点火時期がわかっていないので、2本の固定ボルトは仮締めしておきます。

ディスキャップにプラグコードをつける時は注意が必要で、ロータの位置がノーマルの位置に来るかどうかを確認します。これは“部品の選定”で触れた勘合部の問題をどう処理するかで変ってきますが、今回の実験車ではノーマル位置(a部)から60度進んだ(回転方向は反時計回り)所に来てしまいました。その為、a部にある1番シリンダ識別マークは無視してb部に1番のプラグコードを指し込み、点火順序(1-5-3-6-2-4)に従がって続きのコードを差し込みます。

 

9.取付け その7

もう、ここまで来れば完成間近です。
エンジンルームのハーネスの取り付け回りの体裁を整えます。

入力信号は最低限のものしか入れていませんが、出来れば入れたかったものは次の3つです。
・水温センサ信号    ・スロットルセンサ信号    ・ノックセンサ信号

これを全く入れない、つまり電気的に開放した状態にしておくと・・・・
・水温 : ECMは極低温だと思ってしまい、極低温時の点火制御となる。
・スロットル : スロットルは踏んだ状態となる。スロットルOFF時(アイドル時)の点火制御が出来ない。
・ノック : ノッキングが出ても遅角(ノッキング回避)出来ない。

どれも点火制御には重要な信号です。しかし各センサには取付上の問題(正確に言えば、付けようという気が足りない(笑))があり、今回は見送りました。
でもどうしても開放したままではいけない水温センサ回路に、300[Ω]の抵抗器を入れてごまかしました(笑) 300[Ω]は水温80度に相当します。これでECMに「水温が80度だよ」とウソついて、適温時の制御をさせるのです。でも抵抗器を指し込んだだけって、随分いい加減ですが・・・^^;

 

10.取付け その8

最後にノーマルデスビのバキュームアドバンサに取付けられていたバキュームホースを外し、キャブ側に栓(実験車では左下の画像のように、短く切ったバキュームホースの一端をエポキシ系接着剤で栓をしたものをキャブに嵌めます)をします。

これで取り付けはすべて終わりました。

次は点火時期の調整となります。

 

11.調整 

点火時期の調整です。
先にも述べたように、ECCSは点火時期の制御範囲が広く、レギュラーガソリンでは走行中の進角角度が進み過ぎる可能性があり、あまりお奨めできません。ハイオクで、アクセルを「カバッ」と踏んでもホンの少しノッキングが出るところを走行テストをしながら探します。
点火時期はデスビの取り付けボルトを緩め、デスビ本体を時計回りに回すと進み、反時計回りで遅れます。
 

 

12.最後に

走行フィーリングは・・・・
やはり吹け上がりがスムーズになった感じです。特に中〜高回転域がグー(死語)
またノーマル車が始動時にバッテリーがへたって「グゥッッッ」で終わってしまいクランキングできない場合でも、ECCS化後は容易に始動できます。ハイコンプエンジンでは切実な問題であり、特に有効でしょう。

近い内にノックセンサを付けて、ノッキング時の遅角もするようになれば、あと5度程度はイニシャルの点火時期を進めることができ、更にフィーリングアップが図れると思います。
予定は未定ですけど(爆)

 

主な流用部品
部品名 流用元 改造の有無
ECM C32(ローレル)前期 RB20Eエンジン用
デスビ 430後期 L28E用クランク角センサ内蔵型 有(シャフト変更)
イグニッションコイル Y30(セドグロ)VG20Eエンジン用
ECCSリレー

日産純正汎用1Mリレー

 


13.その後・・・ (2001年以降)

とりあえず、身近な目標として、

*:日産車用の診断機。ECMの自己診断やセンサからのデータの演算状態等がリアルタイムでモニタできる。

の2点でした。

【CONSULT対応化】

まずCONSULT対応にするには、ECMの変更が必要です。CONSULTは1989年に導入され、この時期以降にマイナーチェンジやフルモデルチェンジしたECCS仕様の車両は対応します。この中でもこのクルマに使用可能な条件は、
  • 6気筒用であること(V型でも可)
  • デスビ配電式である事

の2点です。具体的には、RB系シングルカム、VG系シングルカムが最有力。

と言う事で、初代エルグランド(E50型)VG33EエンジンのECMを採用しました。

右はECM変更後、CONSULTと接続した状態の画像です。自己診断機能は全診断残してあるので、入力していないエアフロ信号などは常にNG検出をしてしまいますが、とりあえず正常にECMは作動(もちろん運転性にも問題なく作動)し、CONSULTとも通信可能な状態にはなりました。

なお、従来は水温センサがない代わりに抵抗を接続して擬似信号を作っていましたが、この系統にフェールセーフ機能が付加されたため、撤去しました。

【ノックセンサ取り付け】

ノックセンサには形状が2タイプあって、どちらも試したのですがイマイチ。ノックを回避しているのかが判りません。ノックセンサはエンジンの仕様(材質、センサ取付位置)やECMとの愛称があり、どれでも良いという訳でもありません。その前に、エアフロ信号を入れなければ、フェールセーフ状態に入る関係でノック制御が機能しない可能性があるので、こっちを先に解決しなければなりません。

現在考えているのは、エアフロの代わりにバキュームセンサを入れる事。点火制御だけですから近似信号でも十分なハズ。

まだまだ先がありそうです・・・

 

 

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