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純正エアコンのダイヤフラム パンク修理

適用車種 題材は純正エアコンですが、ダイヤフラムなら部位を問わず試す価値あり
難易度指数:2 パンク修理剤を使います

1.概要

意外と故障が気づかれないまま放置されている車両が多いと推測されるエアコンのバキューム系統のお話。
現象としてはこんな感じでしょうか。

・ ヒータ時、効く事は効くが、正面吹き出し口から温風が出る(設計上は風がほとんど出ない仕様)
・ モードセレクトレバーをDEF-ROOM切り替え時、フラップの作動音(パタン音)やバキューム大気開放音(プシュー音)が妙に弱い
・ インテークドアの内気吸い込み口を覗くと、VENTでも外気全開になっていない(内気側が全閉せずに半開になっている)

等々。バキュームが完全に低下していないので、暖房も(ACサイクルが正常ならば)冷房もある程度効くので、なかなか異常に気付きにくいと思います。
2番目は正常時を知らないと気づきませんし、3番目は疑って見ないと気づきません(良く見れば確実に判るが)。1番目が一番分かりやすいかも。しかし、これも「こんなモン」だと思っているとスルーですね。

多くの原因はインテークドアアクチュエータのダイヤフラムのパンクです。230の場合、外気導入でここにバキュームが掛かる仕組みになっていますが、ヒータ系と換気系モードは常にバキュームが掛かっており(逆を言えばブロア停止か冷房時のみOFF)、使用頻度が高く痛みやすい部品です。
ウチの230は2台ともパンクしており、修理方法を模索していました。ダイヤフラムのパンクですから普通はASSY交換です。
新品など入手できないし、当時モノの中古品では既に破れている可能性があり、そうでなくても余命いくばくもないので今後の耐久性はあまり期待できません。あとは・・・

1. 他車流用
2. ロッドを組み替え
3. パンク修理(笑)

の3通り。「1」はなかなかありません。「流用」とは『専用外の部品を無加工で付ける』と言う意味ですから、この部位に限らず、そんな世の中は甘くないです(笑)
「2」は230か330用の機能が近くて(二段効き)負荷の軽いデバータドアアクチュエータなどの中古品を入手してロッドだけインテークドア用と組み替えて使えないか、と言う事ですが、中古部品の調達が必要なので悪あがきして着手しやすい「3」をやってみました。

なお、今回はインテークドアアクチュエータの再生修理を取り上げますが、すべてのダイヤフラム再生修理に応用できる可能性があります。

 

2.ダイヤフラムとは

作業解説の前に構造のお話。ネット上にある解説を引用すると「圧力や流量、液面などの自動制御用に使われている空気圧で作動する調整弁のこと。」とあります。人間の鼓膜も一種のダイヤフラムです。バキューム式ダイヤフラムの場合はバキュームの圧力を利用してモノを動かすチカラ(またはその逆もアリ)に変換する部分に使われます。

中の膜は劣化や疲労が蓄積すると破ける事があります。修理方法は一般的にはダイヤフラムはASSY交換が原則である場合が多いです。理由として、ケースがカシメになっているので分解できないからだと思います。

 

3.修理方法

ASSY交換しかないと書きましたが、これはメーカ推奨の修理方法です。しかし製廃などで新品の入手が困難な今回のような場合は、破れた箇所を何とかして塞いでみます。パンク修理です。ここまで来ると頭の中はタイヤのパンク修理のモードになりますね。あえてそのまま行きます(笑)

具体的には、パンク修理剤をダイヤフラムの中に注入するのです。はたしてこれで直るのか???

【手順】

  1. エアコンのインテークエアボックスを外します。
    これにはグローブボックスを外してアクセスしやすくします。
  2. アクチュエータを外します。
  3. いよいよパンク修理剤の登場(笑) パンク修理剤のノズルは外します。
    また、バキュームホースを用意します。車両に装着されているホースを拝借しても良いかな、と思います。
  4. アクチュエータとパンク修理剤をバキュームホースを使って直接つなぎます。
  5. パンク修理剤を注入します。1秒注入、数秒休み、1秒注入を3〜5セット繰り返します。この後、作業はロッド側を下にして続けると、液剤が垂れて来るので、このようになるまで続けます。
  6. この状態で丸1日以上放置し、逆の手順で元に戻します。
  7. 補修箇所の強度はそれほどでもないと思われるので、今回の事例では市販のスプリングを用意してリターンスプリングを弱いタイプに変更しました。

 

5.耐久性、応用性は?

本作業は2012年5月に実施しています。本ページは2020年5月に作成していますが、まずは8年間再発せずに至っています。また今回はエアコン用アクチュエータで実験しましたが、他の部位でも応用できます。ただし、パンク修理剤で直るかどうかは下記に依存すると思われます。

以上から、エアコン系のダイヤフラムならホースも細く、バキュームタンクで圧力の変動を小さくしているのでダイヤフラムへ掛かる負担も小さいので、この手法はかなり有効ではないかと思われます。しかし、エンジン制御系では太目のホースが接続され、INマニ負圧がダイレクトにかかるので、再発の可能性があります(キャブの完爆ダイヤフラムで再発事例アリ)。よって特にエンジン系制御系の場合は「ダメ元」と考えておいたほうが無難です。

 

6.最後に

ダイヤフラム破損時は通常交換しかありませんが、何とか修理できないか、失敗覚悟でやってみた結果を8年間の耐久テスト(?)を含めてレポートしました。エアコン系なら意外といけますね。修理方法の新しい考え方として加えてみては如何でしょうか。

 

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