適用車種 | 130/230 Gバルブ付車 |
難易度指数:3 | ブレーキ油圧系統の修理スキルは必要 |
作動については、例えば・・・
ブレーキペダルをベタ踏みする → 車両が急減速 → Gバルブ内にある減速度検知用ボールが前方に移動して、リヤブレーキの液圧回路を塞ぐ → Gバルブ内の液圧調整機構が作動 → Gバルブがリヤブレーキ側液圧の上昇を抑制 → リヤブレーキの利きを抑制
と言う作動をします。ABSの原始的なものと思って結構です。フロントがディスクブレーキ、リヤがドラムブレーキの車両の場合は、急制動時にリヤが利きすぎてロックしやすいので、このような液圧の制御装置は有効とされています。
また、日産ではこの機構を「ガーリング -
トキコ式」と呼んでおり、おそらくイギリスのブレーキメーカであるガーリング社が絡んだ(トキコがガーリングから技術を買った?)システムと思われます。
似たシステムとして「Pバルブ」と言うのがあり、現在はこちらのほうが一般的です。Pバルブは減速度に関係なく、液圧が上がれば作動してしまうため、当時は少々デメリットが多かったようで、故にGバルブが採用されたと思われます。実際、130型後期のサービス周報ではメリット/デメリットの記述があります。
そして330以降はPバルブの自社改良版の「NPバルブ」が開発され、Gバルブに取って代わって拡大採用されて行きました。
で、このGバルブ、殆どメンテナンスは必要ありませんが、30年以上も使用すると、フルード漏れが散見されるようになります。
修理に関して、メーカの指定はASSY交換でインナパーツの部品供給はありません。正確には130の時はあったのですが、230では設定がなくなっています。130と230とで、この部品はネジの規格違いで基本同一(のハズ)ですが、130用のインナパーツも製廃です。
更にASSYも製廃で入手不可とくれば、残された手段は撤去か意地でオーバーホールしかありません。
撤去の事例も聞いたことがありますが、撤去だと後輪早期ロックの心配があるので、何とか意地で(笑)オーバーホールする方法をここでご紹介します。
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交換部品はゴムパーツ4点。日産純正部品としては供給されないので、現物を採寸し、汎用品を使いました。ここに限らず汎用品のOリングを使う場合は採寸作業が必要ですが、使い古された現物は、伸び・潰れがあるので、採寸するとしても参考程度とし、装着する部品側の採寸結果を重視します。今回ではピストンのOリングが装着される溝の外径や、シリンダ内径などを採寸、汎用規格品の中から適切な寸法かつ要件の合うものを選びます。
名称 | 仕様 | 備考 | |
(1) | ピストン用Oリング大 | 内径:9.8mm 線径:2.4mm 可動部用 要耐油性 | |
(2) | ピストン用Oリング小 | 内径:7.8mm 線径:1.9mm 可動部用 要耐油性 | |
(3) | バイパスバルブ用Oリング | 内径:5.8mm 線径:1.9mm 固定部用 要耐油性 | |
(4) | 角リング | 内径:36.17mm 線径:2.62mm 固定部用 要耐油性 | 実際は内径:約35mm、断面:2.2mm(正方形)の角リングだがOリングで代用。 |
(4)の角リングはドンピシャのタイプが見つからなかったので、近いサイズのOリングで代用します。
Oリングの交換要領は先述の「2.分解」の状態まで行けば、特に説明する必要はないと思います。バイパスバルブと可動するピストンにはラバーグリースかシリコングリースを塗布します。この辺は、ホイールシリンダなどのオーバーホールと同じ要領。角リングは溝に置くだけ。
なお、Gバルブは基準線(グランド面)に対して14度頭を上げた状態でブラケットに固定します。普段は中のボールがGバルブ内の後端に寄っていなければならないためです。まぁ、特に気を付けなくてもだいたいその角度で固定されるのですが、この角度を保持しないとボールが移動する基準、つまりGバルブが液圧制御を開始する基準点が変わってしまう事は知っておく必要があるでしょう。
エア抜きは下記の順番で行います。
エア抜き時、車両の姿勢に注意が必要です。先述の通り、車両が減速した時にGバルブが作動するので、本体をグランド面に対して14度後傾させて固定します。しかしリヤだけウマジャッキを掛けるなどして車両姿勢が前傾状態になると、せっかく14度後傾させて固定したのに本体がグランド面に対して前傾してしまいます。するとGバルブがリヤ減圧側に作用してエア抜きがスムーズにできません。必ず前後均等にジャッキアップして車両姿勢は水平を保ってください。
・・・ってことは、Gバルブ付車で“リヤ(ケツ)カチ上げ改造”する場合は、要注意でもあります。
このGバルブは、130の時代ではオーバーホールが案内されていて、次の230で廃止となった理由を記述した資料は存在しないようです。機能を維持する上で何か問題が生じたのかと思われますが、とりあえずは上記のような対応が可能であることが分かりました。日産の販売会社では対応してもらえないと思いますので、ホイールシリンダなどのオーバーホール経験のある方はできればご自分で、または一般の修理工場などに相談してみると良いと思います。