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ウィンドウ レギュレータ

難易度指数:2 ガラスの動きが劇的に変わるかも

ドアガラスの昇降はウィンドウレギュレータという部品で行います。手巻きのマニュアル式もモータを使ったパワー式も基本構造は同じ。可動部にはグリースが塗られていますが、古くなってくるとグリースにホコリが付着したり、劣化したりして硬化し始めます。するとマニュアル式では操作力増大、パワー式では昇降速度低下、または昇降時異音発生と言う不具合が出始めます。特にグリースが固まる冬場、パワーウィンドウが上がらないと言う事も珍しくはありません。そこでウィンドウレギュレータ(セダン系)のグリースアップ手順をご紹介します。

 

1.構成部品

230ではX型のアームが伸縮してガラスを上下させます。このイラストはセダン&ワゴン&バン系のものですが、HTも大体同じ。ただし、HT系はガラス建付調整が難しいので、脱着はあまりやらないほうが良いかも。

ちなみに、X型アーム式はY30まで採用され、Y31からセダン系にワイヤドラム式になりました。ワイヤと滑車でガラスを上下させるタイプです。初期型の一部車種ではワイヤと滑車が破損してガラスが落ちてしまう不具合が多発、サービスキャンペーンになった事例も。

2.取り外し作業

2−1.ドアフィニッシャ(内張り)

  1. アームレスト(肘掛)の固定スクリュー(P/W式:3個、マニュアル式:2個)を外します。P/W式アームレストの上側のスクリューはカバーをマイナスドライバでこじると出てきます。
  2. ドアインサイドハンドルのエスカッションの取付スクリュー1個を外します(赤丸部)。
  3. ドアロックのノブを外します。台座をマイナスドライバで注意深くこじり(押し付けながら上方へ持ち上げる感じ)、完全に浮いたら台座ごとノブを20回くらい(?)回すと外れます。
  4. マニュアル式ではレギュレータハンドルを外します。画像のように抜け止めピンを外せばハンドルを引き抜く事ができます。
    ではこのピンをどうやって抜くか・・・  カギ状のツールが必要になります。私は自転車のスポークでいつも外しています。
    また、ピンを外す時、勢い良くやると飛んで行って行方不明になることがあるので、注意が必要です。
  5. ドアフィニッシャを外します。ドアフィニッシャは10個前後の樹脂製クリップで固定されています。画像のようなツールでこじります。手で強引に引っ張れば外れますが、クリップやフィニッシャが破損することもあるので、極力工具を使いたいものです。クリップは樹脂が劣化してツールを使っても破損することがあるので、予備を用意しておくと良いかもしれません。

2−2.レギュレータ

  1. ドアフィニッシャを外すと、半透明のビニールに覆われているのが分かります。これはシーリングスクリーンと言い、ガラス下部から滴り落ちた雨水が室内に浸入しない様にしています。この画像は・・・こりゃひどい(苦笑)。 このクルマ、4枚ともこのアリサマ。シーリングスクリーンはれっきとした防水防塵用部品で、新車のドアフィニッシャに被さっているビニールとは訳が違うんですがね。
    レギュレータを外すには、ドアパネル内側の作業穴から行うので、このシーリングスクリーンを破かない様に剥がします。外周部にブチルゴム製のシーラで接着されているので、カッターナイフなどを使って上手く剥がします(取り除くのではなく、接着を剥がすだけ)。冬季はドライヤで暖めるのも良い手だと思います。剥がしたシーラがベトベトしていれば再使用可能なのですが、クルマが古いので、弾性を失ってパリパリの場合もあります。組み付け時は補修用ブチルテープを使って補修する必要があるかもしれません。
  2. ウィンドウガラスを80%ほど下げ、ガラスを外します。パワーウィンドウ車の場合はスイッチの配線は接続したまま行います。画像では助手席側のドアですが、この配線を外してしまうと運転席側のスイッチからでも操作できません。
  3. 画像の丸印のついた3箇所のスクリューおよびナットを外します。(画像右下にある空色の○にはパネルの影になって写っていないナットがあります) 直にナットが出てこない場合は、ゆっくり全開〜全閉させると作業穴から見える位置がある筈です。
  4. 3の作業の後はガラスを引き抜きます。その前にガラスガイド(画像の丸印部)は出来れば外したほうがガラスを抜きやすいです。ガラスをぶつけて割らないように注意。
  5. 黄色い丸印のボルトをすべて外してレギュレータASSYを取り外します。

 

3.グリースアップ

レギュレータを外したら、可動部に付着している古いグリースを除去してから、新しいグリースを塗布します。古いグリースが残ったまま塗布しても効果は半減するので、できる限り除去します。パーツクリーナやブレーキクリーナを使うと良いでしょう。
使用するグリースは本来なら、シリコン系が良いです。これはローラがプラスチック製だからです。でも少し高価で、あまり簡単に入手もできません。ブレーキのメンテに使うラバーグリースはやや安価で性能上もほぼ問題ないかと思います。普通のシャシグリースでも実際は殆ど不具合は起きないようですが、低温で硬くなりやすいようです。
グリース塗布は特にローラがレールを滑る部位に入念に行います。またローラ裏面にあるローラにガタをなくす為のスプリング周辺にも給油します。ウィンドウ昇降時、「ジョリジョリ〜」と言う音の出所はココですので・・・  逆に扇型のギヤはあまり神経質にならなくてもいいかも。指では塗布出来ない部分はCRC-556みたいなものを併用しても良いかと思います。


取り外したレギュレータ(フロント左側)

ローラ&レール部
ここでオマケ情報

230セダンのP/Wレギュレータはフロント、リヤ共通の部品ですので、入れ替えが可能です。

 

4.組み立て

組み立ては取り外しの逆の手順でやれば問題ありません。でもコレだけでは素っ気無いのでもうちょっと補足を・・・(笑)

4−1.レギュレータ

外す時やグリースアップなどでレギュレータ単品でいじくりまわしていると、アームやレールの位置関係が取り外し直前とズレてしまい、どうやったら納まるのか判らなくなってしまいます。このページに出てくる画像やイラストを参考にしながら組み付けると良いと思います。また三角のプレートは向きがあるので注意が必要で、黄色い○の部分が一番上に来ます。最初にココにある突起をパネルの位置決め穴に入れて(引っ掛ける感じで)ボルトを仮締めすると良いです。

また、レギュレータは多少の調整ができる様にドアパネル側のボルト通し穴が大き目になっています。今までボルトが締められていた位置は塗装が剥がれているハズですから、ぴったりそこに来る様にして本締めします。

簡単に昇降テストをして動作を確認後、80%程度下げた状態にしてガラス取付の準備をします。

4−2.ガラス

ガラスはとりあえずドアパネルの中に入れます。次にサッシュ(ドア内部前後にあるガラスが入る溝)に嵌るようにします。これで手でガラスが昇降できるようになります。
そしてガラスを下げて行き、レギュレータの固定部に合わせてナット&スクリューで固定します。

そしてもう一度昇降テストを行い、スムーズに昇降するか、建付けは問題ないか確認します。パワーウィンドウ車なら昇降速度は上がっていて、マニュアルウィンドウ車なら操作ハンドルは軽く回るのではないでしょうか。

4−3.シーリングスクリーン

ドアパネルとの接着剤であるブチルテープは、普通は粘性を失っていないのでそのまま元通りの位置に押し付けて接着します。劣化/硬化している場合は取り除いて専用ブチルテープ(日産純正部品で設定がありますが、市販のテープでも可)で補修します。シーリングスクリーンは隙間なく接着しないと、雨漏りの原因となり、ドアフィニッシャ(内張り)のボードを腐らせます。また、シーリングスクリーンの破れがあった場合は、放置してはいけません。補修するか、適当な素材で自作することになります(純正品は製廃)。

画像はポリ袋での自作例。大きいゴミ袋(厚手のもの)などから切り出して自作したものです(一部純正品を再使用)。これでも立派に役にたちます。ビリビリの純正品を補修するよりも効果的。

4−4.ドアフィニッシャ

クリップがきちんと装着されている事を確認します。外す時にいくつか破損させてしまう事があるので予備を用意していくと良いです。最近ではカーショップやホームセンターでも大規模店なら入手できるようです。まぁ、数個なら無いままでも問題ないケド・・・

フィニッシャを装着する時は上部をドアパネルに引っ掛けるようにしてからクリップ部を叩いてはめ込みます。

マニュアルウィンドウ車ではレギュレータハンドルを固定します。予めピンを装着し、シャフトに押し込むだけです。取付角度も決まっていて、ガラス全閉時に前方向に水平から15〜30度、上に向いた位置にします。

完成したら、再度昇降テストを行い問題ないか最終チェックをします。ガラス昇降は正しく作業すれば作業前と比べると格段に良くなっていると思います。

ドアフィニッシャ用クリップ ガラス全閉時のレギュレータハンドル位置

 

* 折角なのでついでに・・・

ついで作業その1

折角ドアフィニッシャを外したので、劣化しているドアインサイドモールを修理しましょう。

ドアフィニッシャの上側末端部の塩化ビニル製モール(ドアインサイドモール)があります。この塩ビモールが紫外線で劣化して縮んでしまい、両端が浮き上がってしまいます。

A: 修理前の状態。端部が浮き上がったり、酷い場合は完全にちぎれています。

B: モールをフィニッシャから外すと、縮んだモールは取付穴の位置も中心側にずれてしまうので、固定用の爪と干渉→材質の弱いモール側が破損しています。

C: ずれた分、穴を拡大し長穴加工します。干渉をなくすことで、浮きを抑える事ができます。加工方法は削ったりすると応力がかかり破損の原因となるので、半田ゴテ等を使って熱で加工します。バリが出たらカッターナイフで削ぎ落とす感じででやれば良いでしょう。また、曲がり癖ができてしまっている場合は、ドライヤで暖めながら癖を取ると良いです。

D: 完成後の画像。少しまだ浮いていますが、Aと比較すると気にならないレベルになったのではないでしょうか。

ついで作業その2

折角ドアフィニッシャを外したので、ドアロック系統にも給油しましょう。

ドアロックASSYに繋がる各リンケ−ジの関節部にCRC-556などの潤滑油を軽く吹き付けます。またドアロックASSY内部の可動部にも同様にしてやると良いです。特にリヤドアはドアロックASSY内部のグリース固着で、外気温が低い時に限ってアンロックが出来なくなる不具合が散見されます。本当は一旦外して古いグリースの除去からやりたいところです。この作業手順についてはこちらをご覧下さい。

 

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