適用車種 | 130〜330、W430 |
難易度指数:2.5〜3 | 部品さえ揃えば加工等の必要はありません。 「板バネ」って呼ぶのはあまりにも素人っぽいので「リーフスプリング」と呼びましょう(笑) |
セドグロのリヤサスは後席乗員の乗り心地を重視する為に柔らかめにしてあります。しかしこれが裏目に出て、ヘタり易く車高が下がって離陸姿勢になってしまうこと多い様です。年式などによりますが、本来の車両姿勢は水平か若干尻上がり(230ではなぜかカタログのクルマたちが尻下がりだったりしますが・・・)。しかし20年以上経過した車両は尻下がりになっていることがほとんど。逆に前がへたって下がる分ならまだ許せるのですがね・・・世の中うまく行かんものです(苦笑)
コイツを何とかしようと、ショックアブソーバを交換する方が多くいらっしゃいますが、これは大きな誤解。雑誌でも「ショックのヘタリが原因で車高が下がって・・・」なんて平気で書かれているのでムリも無いでしょうが、こんなのウソウソ。一般的なオイルショックアブソーバのヘタリと車高には基本的には関連性がありません!! ショックはスプリングの揺れを早く鎮めるのがお仕事。230や330などのガス入りショック(別名“ド・カルボン式ショックアブソーバ”と言い、オイルショックの性能を安定させる為に窒素ガスを追加封入したもの)の場合に限り、オイルが大量に漏れると伸び方向の力がなくなるので若干車高が下がりますが、それでもリヤでせいぜい1cm程度です。車高下がりの根本はスプリングのヘタリ。従がってスプリング交換をしなければ解消しません。といっても、これがまたほぼ全滅(製廃)。
ですから車両姿勢を矯正するならフロント側(を下げる)でやるのか、ロングシャックルに変更する(要改造申請)のが一般的でした。
ま、それでも良いのですがね(笑) シャコタンが好みならヘタリもかえって好都合でしょう。私の場合はフロントを下げる=コイルスプリングを切る に抵抗があったのと、リヤを上げるなんて誰もやっていないので検討してみました。
スプリングを他の仕様のものにする場合、寸法的に付くのかどうか?車高はどうなるか?乗り心地は? の3点が問題になりますが、大体下表の項目を検討します。
着 目 点 |
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取付 | 全長、幅、フロント目玉〜センタボルト間の距離、リーフ板厚、枚数 |
車高 | バネレート(ばね定数)、フリーキャンバ(フリーハイト) |
乗り心地 | バネレート(ばね定数) |
次に130〜W430までの主なリーフの仕様です。
適用車種 | 130 (スペシャル6) |
230 (〜73年2月 GL M/T) |
230 (73年3月〜 GL) |
330(6気筒 セダン&HT) |
W430 (ワゴン) |
バネレート [kg/mm] | 1.87 | 2.28 | 2.05 | ← | 2.54 |
全長 [mm] | 1400 | ← | ← | ← | ← |
幅 [mm] | 60 | ← | 70 | ← | 60 |
枚数 | 5 | ← | 4 | ← | 5 |
フリーキャンバ [mm] | 191 | 131 | 146 | 151 | 161 |
キャンバ/常用荷重 [mm/kg] | 9/340 | 0/300 | 0/300 | 0/310 | 25/345 |
スタビライザの併用 | 有り | 無し | 有り | ← | 無し |
※ 純正新品の供給 | 不可(製廃) | ← | ← | ← | ← |
※製廃でも復活する可能性があります。
ちょっと難しい項目を補足します。
個人的にはバネレートは2.5[kg/mm]くらいは欲しいところ。あまりバネレートが柔らかいと、いくらフリーキャンバが大きくてもヘタリによる車高変動が大きいです。2.5[kg/mm]程度ならあまり乗り心地は犠牲にならない範囲で走行安定性(特に強アンダーステア)が改善出来ます。
これらを考慮して一番近いスペックのリーフを調べて行くと・・・・
WY30系(WUY30も含むY30ワゴン系)のリーフに当ります!!
WY30は製作期間が15年ほどありましたので種類も沢山ありますが、主なモノを挙げますと・・・
WY30(83年6月〜85年6月 AT車) | WY30(85年6月〜 AT車) | |
バネレート [kg/mm] | 2.57 | ← |
全長 [mm] | 1375 | ← |
幅 [mm] | 60 | ← |
枚数 | 5 | ← |
フリーキャンバ [mm] | 161.5 | 165 (?) |
キャンバ/常用荷重 [mm/kg] | 13.5/380 | 25 (?)/355 |
※ 純正新品の供給 | 可(1個\27000くらい) | 可(1個\39000くらい) |
日産純正部品番号 | 55020-V6402 | 55020-V7600 |
*: ワゴン(WY30系)とバン(VY30系)ではリーフの仕様が全く異なります。
*: キャンバに不明な点があるので“?”マークをつけました。
もう少し突っ込んで検証してみましょう。
WY30用は軽量化の為、全長が25mm短い。しかし、これくらいならシャックルで吸収できる範囲なので、問題ないと思います。
全長より重要な長さはフロント目玉(*)〜センターボルト間で、ここがちょっとでも違うとアクスルケース(ホーシング)のアライメントが異なってしまうので、ホイールベースに影響がでます。だからドンピシャでないとバツ。
測定してみると・・・見事一緒の545mm。つまり25mm短いのはセンターボルト〜リヤ目玉間距離となります。
ってことで、長さは問題ナシ!
* 目玉 : スプリングを車両に固定する為の前後にある穴の事。固定にはブッシュを介する。
もともとの仕様が60mmか、70mmかで状況が違います。
ノーマルリーフが何枚重ねなのかで状況が違います。
部品名称 | 部品番号 | 概算単価 | 使用個数 | 備 考 |
ロケーションプレート(アッパー&ロア) | 55054-P0100 | 300 | 4 | 130は特に必要ありませんが、 交換する場合はロア側には使えません。 |
シートパッド(アッパー&ロア) | 55243-E0800 | 250 | 4 | |
Uボルト | E5247-P0801 | 750 | 4 |
バネレートやフリーキャンバなどの仕様が分かれば、車高の変化はおおよそのですが計算で出ます。下はその計算式です。
たわみ量の変化[mm] = リヤ片輪に掛かる車重(車検証の後軸重/2)[kg] / 装着するスプリングのバネレート[kg/mm]
車両装着時のキャンバ[mm] = 装着するスプリングのフリーキャンバ[mm] ― たわみ量の変化[mm]
これを当てはめてみると車高の変化量は・・・
130 (スペシャル6) |
230 (〜73年2月 GL M/T) |
230 (73年3月〜 GL) |
330(6気筒 セダン&HT) |
W430 (ワゴン) |
|
車高の変化量[mm] | 21 | 46 | 46 | 42 | 4 |
* 部品番号:55020-V7600を使用したと仮定する。
* 交換前後の部品は、経年劣化によるヘタリ分は考慮していない。よって、ヘタったリーフから新品リーフを入れると更に上昇する可能性がある。
少し難しくなってしまいましたけど、失敗はイヤなので机上で検討するとこんな感じ。これらはすべて新品同士での比較です。ノーマル状態はへたっているので、ヘタリ品→新品にすればこれ以上の変化量があるでしょう。例え10年使用の中古品でも30年モノよりかはマシなハズ。ここまで来ると流用可は確信を持つことが出来ますね^^;
今回は130後期(パーソナルDX)にこの部品を流用してみました。
パーソナルDXでは車重がスペシャル6とは異なるので、リーフのフリーキャンバも異なります。
パーソナルDX用リーフ | WY30用(55020-V7600)にすると | |
フリーキャンバ [mm] | 179 | 165 |
キャンバ/常用荷重[mm/kg] | 9/317 | 39/317 |
車高の変化量[mm] | - | 30 |
* : 130ではパーソナル6〜カスタム6までが同じ仕様のスプリングです。
力仕事ですが、交換手順は比較的単純。
取り外し順序を簡単に言うとリーフの中央部→前部→後部です。日産の整備マニュアルでは中央部→後部→前部ですが、シャックルブッシュが固着してシャックルが外れ難いので、後部は最後のほうがやり易いです。リーフは15kg以上ありますから、怪我をしないよう注意が必要です。
また、分解すると気が付くのがサビ。アクスルケースとロケーションプレートとの合わせ面、ロアシートとロケーションプレートとの合わせ面にはかなりのサビがあるので、作業日数は一日半以上取り一日目は分解&サビ処理、二日目に組み付けとすることをオススメします。
取付順序は整備マニュアル通りに前部→中央部→後部にします。ここでのポイントはフロントピン、ショック取付ナット、シャックル取付ナットは一旦仮締めしてすべてを組み付けた後、アクスルケース中央部(デフのふくらみがある所)にガレージジャッキを掛けて、ウマから離れる寸前まで持ち上げてから規定トルクで本締めをします。これはブッシュを介して付いている部位は常用荷重を掛けた状態で本締めしなければならない為です。これをやらずに無荷重状態で本締めすると、ブッシュに捩れストレスが常時掛かり、早く劣化します。
なお、各部締付トルクは下表の通り。
部 位 | 締付トルク[kg-m] |
フロントブラケット取付ボルト | 2.8 〜 3.3 |
フロントピン | 13.0 〜 13.5 |
ショック取付ナット(ロア) | 3.8 〜 4.4 |
Uボルト取付ナット | ↑ |
シャックル取付ナット | 4.5 〜 5.3 |
なお、今回は新品でなく、中古部品を利用しました。解体屋にWY30がある可能性は少なく、あったとしてもサスを分解できる状況でない場合が多いので、探す手間を考えると通販で入手するのがベターだと判断。全国の加盟中古部品店の在庫の中から探せる「ビッグウェーブ」を利用してみました。
車高はどれくらい変化したのか・・・
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今回は中古品を使用したので、ヘタリ分が相殺された分もかなりある思います。 それでも3cm程度の上昇はあり、計算通りとも・・・ またサイドシルモールを見ると、明らかに尻上がりにはなりました。130はボディー形状そのものが尻下がりの傾向にあるので目立ち難いカモ・・・
下表はサイドシルモール端部での車高の比較です。
モール前端部高さ[mm] | モール後端部高さ[mm] | |
スプリング交換前 | 337 | 325 |
スプリング交換後 | 330 | 358 |
変化量 | -7 | +33 |
リヤの車高が変わると重量配分が変わるため、フロントの車高も変化します。車両の挙動にも変化があるでしょう。
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次に走行フィーリング。バネレートは1.3倍になりましたので、ややハードになります。とはいえ、乗り心地は悪くはなく、高速でのコーナリングが安定しています。バネレートが上がったことでロール量が軽減し、アンダーステア傾向が弱まるからです。ちなみに、この設定では当時のハイウェーパトに近いです。
リーフ全長が短いのでシャックルの角度が少し変わってしまうのですが、特に問題となるほどではありませんし、尻下がりも多少は矯正できてまぁまぁの結果が出ました。リヤが軽い230ではもう少し良い結果が出るかも。ホントは新品リーフでやりたかったです。でも高くて貧乏モノには買えましぇん。どなたか試して結果を教えて下さい(笑)
なお、W430(430ワゴン)の場合は注意を要するので、こちらもご覧下さい。