ホーム > 自分でメンテ(電装編) > 4. トラブルシュート(エアコン、クーラ編)


トラブルシュート(エアコン、クーラ編)

どこが悪いのか、どこから手をつけて良いのかサッパリ分からん、という方の為の、現象別トラブルシュートです。230の純正エアコンを基準にまとめましたが、原理や構成部品、トラブルシュートの考え方は基本的にどの車種でも一緒で、クルマに限らず、部屋のエアコン、冷蔵庫、冷凍機も同じです。

1.原理のお話

堅っ苦しくてスイマセン(笑) なぜ冷えるのか、原理を簡単に・・・

一般的に例えられるのは、注射の時にやるアルコール消毒。肌に塗られた時、スースーしてヒンヤリした感じがするのは皆さんご存知かと思います。これは液体のアルコールが気化する時に、一緒に熱(体温)を奪っているのです。

クーラ等の冷房装置もこれを利用しています。高圧&液体の冷媒(フロンガス)を車内にあるエキスパンションバルブで減圧すると気化が始まり、この状態でエバポレータへ導くと、熱を奪って冷えて行きます。気化した冷媒はコンプレッサで圧縮されコンデンサへ送られ、車内で奪った熱を外部に放出すると、また液体冷媒になりエキスパンションバルブへ・・・
の繰り返しとなります。これを冷房サイクル(別名:冷凍サイクル、クーラサイクル、エアコンサイクルなどとも呼ぶ)と言います。


冷房サイクル

もう少し詳しく見ると、下のような図になります。冷媒は

高圧気体  ->  高圧液体  ->  低圧液体  ->  低圧気体  ->  高圧気体 ・・・

と姿を変えながら冷房サイクル内を循環しているのです。

 

2.構成部品のお話


エアコンサイクル構成部品(230後期 純正エアコン)


シングルキャブ車(130最終型)



ツインキャブ車(後期230純正エアコン装着車)

 

CAUTION

  • 高圧配管は高温になっている可能性があるので、触る場合は火傷に注意すること。

  • 冷媒が殆どない状態での作動は、コンプレッサを焼きつかせる原因になるので長時間行わないこと。やむを得ず作動させる場合は、エンジン回転はアイドル状態とし、極力短時間にとどめること。

  • 旧冷媒のフロンガス(R-12)は大気開放をすると、法規に抵触するので厳禁。

 

3.不具合現象別推定原因一覧

1.コンプレッサがONしない(エアコンS/W ONでマグネットクラッチから「カチン」と音がしない)

* : セドグロでロープレッシャS/Wが装着されるのは430以降

2.コンプレッサがONするのに冷えない(吹出口温度と外気温度の差が20℃未満)

3.異音が出る(エアコン作動時のみ異音が出る)

  1. コンプレッサ(エンジンルーム)から
  2. 室内から

4.コンプレッサON時のアイドル回転数不良

5.オーバーヒート、水温上昇気味

  1. 高速運転時に発生
  2. アイドル時、渋滞等ノロノロ運転時に発生

6.クーラ使用時、室内に水漏れ

7.吹き出し口からの風が白い

  1. DRYモード使用時
  2. COOLモード使用時

 

4.冷えに関する点検方法

A.冷媒量、冷媒圧力点検

エアコンの点検では最重要項目であり、これがハッキリわからないとハナシにならないと言っても過言ではありません。本来の点検法は・・・

しかし、これらは素人には不可能です。特に旧冷媒(R-12)の交換は実際に整備工場でもほとんどやらなくなりました。とは言っても、クーラを使う時期になったら点検は必須です。もし、冷媒漏れを起しているのに気づかずにS/WのONして走行するとコンプレッサが焼きついてしまいます。これだけで修理代は5万は増になってしまうのです。旧車オーナーなら、冷媒が入っているかどうかのチェックくらいは出来るようになりましょう本来は測定器具が必要ですが・・・

そこで代替法も含めてご紹介します。点検内容別に(a)から(d)までありますが、年に1回、(a)と(b)、または(b)と(c)のいずれかの方法で点検される事をオススメします。

【オマケ知識1】 真空引き作業

エアコンサイクル部品の交換などで冷媒を抜く作業を行った場合、冷媒充填作業直前に真空ポンプ(画像下部)を使って真空引き(エアパージ)を行います。目的は次の通りです。

  • 冷媒を充填されやすい状態にする
  • サイクル内の水分を蒸発させる(真空状態なら常温でも水は沸騰する) *

*: サイクル内に水分が混ざると冷媒(フロンガス)と化学反応を起こして塩酸になり(オゾン層破壊も確かこの理屈)、部品が腐食してしまうのを防止する

真空引き後、そのまま10分以上放置して完全真空状態が保持できていればOK。もし、真空状態が維持できない場合は、冷媒を充填してもすぐ漏れてしまいます。

これらの工程を経て、ようやく冷媒充填(ガスチャージ)工程に入ります。補充を繰り返すと、空気が混入することがあり、また総充填量も分からなくなるので、何度も補充することは好ましい事ではありません。
メータが2つ付いているのがゲージマニホールド。

【オマケ知識2】 冷媒がないと、なぜコンプレッサは焼きつくの??

コンプレッサには“コンプレッサオイル”が入っており、摺動部の潤滑油として使用されます。冷媒が旧フロン(R-12)か、新冷媒(R-134a)かでオイルは異なり、冷媒と混ざりながら、冷媒と共にエアコンサイクル内を循環しています。 

もし冷媒がない状態でコンプレッサを作動させると・・・

  1. コンプレッサの吐出側(高圧側)からオイルだけが吐出される
  2. 冷媒が無いのでオイルはコンデンサ近辺に滞留してしまう
  3. コンプレッサ内のオイルはカラになる
  4. コンプレッサ内部に潤滑不良が発生し、焼きつく

このような結末になります。焼きついたコンプレッサはオーバーホールしないと再使用は出来ません。これだけで費用は5万円以上掛かります。

昭和50年代半ばあたりから、冷媒圧力スイッチ(ロープレッシャスイッチ)が追加され、サイクル内の圧力が異常に低い時はコンプレッサがON出来ない仕掛けになっています。しかしそれ以前の車両ではONしてしまうので、長期間使用していなかった場合は必ず冷媒充填量のチェックをしてからクーラを使用するべきです。特に旧車の場合、サイクル内の気密性は元々あまり高くは無く、シーズン毎に冷媒を補充ような仕様ですから、正常でも冷媒は減っている可能性もあり得るのです(この場合はコンプが焼きつくほど減ってはいないでしょうが)。

「エアコンのスイッチを入れたけど全く効かず、そのまま乗っていたらコンプレッサから異音や煙が出た」なんて言う場合、上記の知識が無かった為に“トドメ”をさしてしまったと言えます。気をつけましょう^_^;

(a) 非作動時の冷媒圧力(簡易点検)

これはかなり大雑把な点検です。プロの目から見れば非常に素人臭いやり方で、笑われてしまうかもしれません(笑) でも圧力計が無いのだから、少しは参考になるハズ。
コンプレッサがOFFしている時(エンジンの状態は関係無く)の冷媒圧力はだいたい高圧・低圧とも5〜6kg/cm2くらい。エンジンが停止した状態で、ゲージマニホールドを接続する部分(サービスバルブ)のキャップを外しバルブの先端を瞬間的に押してバルブを開けてみます。冷媒が入っていれば「シューッ」と勢い良く漏れ出してくるハズ。

サービスバルブがついている箇所は

の4箇所です。旧車では一般的にはコンプレッサにあります。どれが高圧で、低圧かはここまでの文章を踏まえつつ、配管を良く見ればわかるでしょう。ココでの点検は、高圧、低圧どちらでも構いませんが、高圧側のほうがオイルが飛び散らなくて良いかも。

この音や勢いを覚えておきながら、タイヤのバルブでも同じようなことをやってみます。タイヤの空気圧は約2kg/cm2なので、これと比較すれば、だいたいの事はわかると思います。

CAUTION
  • サービスバルブを開くと、冷媒と共にコンプレッサオイルも出てくるので、飛び散らないように必ずウエス等を被せてやること。
  • 点検直前にコンプレッサをONしていた場合は、OFFしてから少なくとも30分以上経過してから行うこと。

 

エアコンのバルブとタイヤのバルブを開いてみて 冷媒充填量
 明らかに冷媒のほうが勢いが良い 正常 〜 やや少ない
 タイヤと同じくらい かなり少ない
 タイヤのほうが勢いが良い ほとんどカラ

タイヤのほうが勢いが良いなら、コンプレッサを作動させて点検しても結果は見えています。むしろ作動させた事によるダメージを考えると、ONしてはならない状態です。

 

(b) リキッドタンク サイトグラスの点検

ここでは主に冷媒量の確認 が出来ます。旧車のクーラはガスが抜けやすいので、補充(シーズン毎に補充するくらいでも異常ではない)の要否判断の一つになります。本当は冷媒量と言うよりも、高圧液体冷媒の流れを目視点検するのが目的。

【点検方法】
まずエンジンを始動しエアコン(クーラ)をONします。しばらく走行してからアイドル状態でサイトグラスの中の様子を確認します。

もし、クーラの効きがイマイチで、サイトグラスの状態がBやCであったら、冷媒が減っている可能性が高いので、補充が必要です。

なお、冷媒量が極端に少ないと思われる場合は、コンプレッサ焼きつきを避けるために走行はせず、なるべく短時間に、かつ低回転で確認しましょう

 

状態A 状態B 状態C 状態D

  • 正常
    (液体冷媒の中を気泡が数個、「チョロチョロ〜」と流れているのが見える)

  • 冷媒が少ない
    (多数の気泡が連続的に流れているのが見える、または白濁している

  • サイクル内にエアが残っている

  • エキスパンションバルブの開度が過大

  • 冷媒が殆どない
    (タマに液体のようなモノが流れる程度)

  • 過充填

  • 冷媒が流れていない
    (サイクル内詰まり等)

  • 冷媒が全くない

  • コップレッサが作動していない
    (透明)

注1: サイトグラスの状態は、圧力以外にも外気温度、コンデンサ前面温度、天候等の影響により一概に言えない場合がある。
注2: サイトグラスだけでは正確な判断は出来ない。必ず冷媒圧力点検も加味した上で判断する。

(c) コンプレッサ高圧、低圧パイプの温度(簡易点検)

エアコンサイクルの点検で最も重要なのは高圧、低圧の圧力測定ですが、冷媒温度は冷媒圧力に比例するので、配管温度を測ればおおよその判断はつきます。各圧力の正常値(外気温度約25度の時)と冷媒温度の関係は次のようになります。

高圧側冷媒圧力 = 11 〜 16kg/cm2  ->   冷媒温度 = 約50 〜 60度 (コンデンサ 〜 エキスパンションバルブ間)

低圧側冷媒 圧力 =  2 〜 3 kg/cm2    ->   冷媒温度 = 約 0 〜 7度

これを踏まえて、エンジンルーム内のエバポレータ近辺のパイプを触って確認します(高圧側パイプを触る場合は火傷に注意)

触ってみる配管は右の画像のように、室内から出ている配管2本。合計4本の配管がありますが、最も太いのが低圧配管、次に太いのが高圧配管です。残る細い2本はSTV&エキスパンションバルブ制御用なので無視します。
で、高圧配管が熱くなるか?、低圧配管は冷たくなるか(*)?を確認します。

高圧は熱く、低圧は冷たくなれば、リキッドタンクのサイトグラスにやや多めの気泡が見られてもそこそこ冷えるハズです。

*: 低圧配管は低温になるので、配管に結露または霜付きが発生する。

 

(d) コンプレッサ高圧、低圧配管の圧力(上級者向け)

もし、ゲージマニホールド(冷媒圧力計)があったなら、こちらをご覧下さい。

コンプレッサ〜コンデンサ間の高圧配管はかなり高温になるので火傷に注意が必要です。また、エンジン回転中に点検するので、巻き込まれにもご注意を

高圧側冷媒圧力
(高圧冷媒温度)
低圧側冷媒圧力
(低圧冷媒温度)
不具合現象 サイトグラスの状態 原 因
正常 低い
(圧力が負圧になる事がある)
  • 冷えない
  • 冷媒の充填が十分に出来ない
D
  • エキスパンションバルブ調整不良(閉じ過ぎ)
  • エキスパンションバルブの感温筒ガス漏れ(バルブ全閉の為、低圧圧力は負圧になる)
  • リキッドタンク詰まり
  • ストレーナ詰まり (*1)
正常 高い
  • 冷えが弱い
  • 冷媒充填量が十分なのにリキッドタンクに気泡多い
B
  • エキスパンションバルブ調整不良(開き過ぎ)
低い 正常
  • 冷えがやや弱い
B
  • 冷媒がやや少ない
高い 正常
  • 冷えがやや弱い
D
  • 冷媒過充填気味
  • コンデンサフィン目詰まり気味
  • ラジエータファンの冷却風量不足
低い 低い
  • 冷えが弱い
B、C
  • 冷媒不足
  • リキッドタンク詰まり
  • リキッドタンク〜エキスパンションバルブ間に詰まり
  • エキスパンションバルブ調整不良(閉じ気味)
  • ブロアは正常に回転しているが、吹出し口の風量が弱い
    (エバポレータが凍結して風の通路を塞いでいる)
A
  • STV作動不良
  • エキスパンションバルブ感温筒取り付け不良によるバルブ開度不良
低い 高い
  • 冷えない
 
  • コンプレッサ圧縮不足
高い 低い
  • 冷えが弱い
 
  • コンプレッサ〜コンデンサ間に詰まり
  • エキスパンションバルブ調整不良(閉じ過ぎ)
高い 高い
  • 冷えが弱い
  • 全く冷えず可溶栓(*2)が破損する
D
  • 冷媒過充填
  • コンデンサフィン目詰まり
  • 電動ファン不作動(FF車など)
  • 冷えが弱い
B、D
  • サイクル内にエア混入

*1 : ストレーナは車種やエアコン/クーラシステム、メーカ等によって、有無、装着部位にバリエーションがある。230純正エアコン(日立製)の場合はエキパンの入口にあるが、330用になるとリキタン出口にある。装着されていないものも多い。
*2 : 可溶栓・・・セドグロでは330以降のリキッドタンクに装着。高圧側冷媒圧力が異常上昇時(約35kg/cm2)、システム保護の目的で冷媒を放出する。

B.冷媒漏れ点検

旧フロン(R-12)を使用しているエアコン(クーラ)の場合は、配管等からの冷媒漏れは比較的容易に発見することができます。
配管継手等にオイルで湿った汚れがある場合は、冷媒漏れの可能性が大と言えます。これは冷媒はコンプレッサオイルと共に循環しており、漏れた場合はコンプレッサオイルも一緒に漏れ出すからです。

下は、STVとその周辺の画像です。黄色い丸で囲んだ部分に湿っぽい汚れが付着しているのがわかるでしょうか。このような部分は冷媒が漏れている可能性が高いと言えます。ちなみにこの車両の場合、STV〜コンプレッサ間の低圧ホースのSTV側の継手か、サービスバルブが怪しいです・・・

配管継手からの冷媒漏れの場合は、一般的には二丁のスパナ(モンキースパナでも可)を使って増締めしてみます。一旦ホンの少しだけ緩めてから締めなおすと良いでしょう。ナットが大きい(22mm以上)ならある程度強めに締めても良いのですが、小さいナットは手加減しないと破損します。増締めしても漏れるようなら、フレアパイプの接続部密着面で異物を噛んでいるか、キズや虫食い状の腐食が発生している可能性があります。一旦切り離して点検し、状況に応じて清掃/修正/交換をします。
また、80年前後から採用された、継手にOリングというパッキンのようなものでシールしてあるタイプ(それ以前はフレアパイプ式)は、締め付けトルクは重要で、増締めはオススメしません。普通ココから漏れる場合はOリング交換になるでしょう。

 

C.バキューム点検

230純正エアコンでは、エアコン制御がバキューム方式となっています。これはエンジンのバキュームを利用して、吹出し口や、内部の風の通路を切り替えたり、エンジンのアイドルアップなども行っています。このシステムはセドグロだとY30あたりまで採用されていました。

もし、バキュームが全く掛からない場合、どのようになるか・・・
230に限って言えば、

  1. どのモードにしてもインスト正面吹出口のみからしか風が出ない。
  2. ヒータもクーラも効かない(モードレバー、テンプレバーに関係なく送風しか出ない)。

という状況に陥ります。230ではバキュームホース劣化による制御不能で、クーラもヒータも作動不良を起している車両が多いので要注意です。

これはクーラ使用時の内部の風の流れを示す図です。本来なら、黒い矢印のようなエバポレータを通る経路を流れます。しかし、バキュームが掛からないと、デバータドアはエバポレータ側通路を塞ぐ位置に移動するので、太い赤点線の様にエバポレータではなくヒータコアを通過して吹出口へ向かいます。このときはヒータコアもバキュームウォータコックが作動しない(ヒータコアには温水が流れない)為に、仮にTEMPレバーをホット側にしても温まりません。これは「COOL」だけでなく、すべてのモードでこの状態になります。また、「DRY」、「COOL」モードではバキュームに関係なくコンプレッサはONするので、冷房サイクルが正常ならエバポレータ自体は冷えるのですが、そこに風が通過しないので吹出口は冷たくなりません。

バキューム回路の点検は主に「A/Cバキューム系統点検」に点検方法が載っていますので、そちらを参照下さい。

 

5.冷媒について

A. 冷媒の種類

  1. 旧冷媒(R-12またはCFC12とも言う)

    92〜94年以前の車両は大抵このR-12とよばれるフロン(フレオン)ガスを使用しています。冷媒としては好都合な物質で、直接人体へは無害、製造も比較的容易に出来るそうですが、オゾン層破壊温暖化(温室効果は二酸化炭素の約8000倍)の原因とされています。1987年にはモントリオール議定書により製造・輸入が禁止されてから価格が高騰しています。しかし、アジア方面からの密輸が止まらないらしく、今でも相当数が流通しています。たま〜にどこかの業者が密輸、密造で摘発されている新聞記事を目にしますが・・・
    と言うことで現在はオススメできない冷媒です。もし規定量(1200g)のガスが大気に漏れたら、CO2で8トン相当の温室効果ガスを放出した事になります。
    また、補充ばかり繰り返すと、サイクル内の空気が混入するので内部で塩酸が生成し、部品が腐食します。

  2. 新冷媒(HFC-134aまたはR-134aとも言う)

    R-12に代わって採用された冷媒です。基本的にはコンプレッサオイルが異なるので、混用は不可。冷媒としての機能はR-12より若干劣り、性質に合わせて各装置の性能・仕様も異なります。
    ただし、アメリカでR-12のシステムでR-134aを使用可能にさせるキット(レトロフィットキット)が一般のカー用品店でも売っていて、これは日本の輸入工具販売会社でも販売されています。コンプレッサオイルに専用添加剤を注入することにより、システムはそのままでR-134a仕様に転換させるものです。HPもあるのでそちらをご覧下さい。検索サイトで「サンケン」で探せば見つかります(笑)
    なお、R-134aも1997年の京都議定書により温室効果ガス(二酸化炭素の約1000倍の効果)に指定され、近い将来、使用が制限される予定です。
    * R-12からR-134a仕様に改造する情報は当ページの「投稿コーナー」にも掲載しています。

  3. 代替フロンその1

    2年ほど前からでしょうか。R-12用システムに使用可能という謳い文句で出回りました。確かR-134a用のシステムにも使えるとか言っていたような気がします。主成分はR-134a。しかし、トラブルが多発する、とのウワサが出回っており、恐くて手が出せません^^;

  4. 代替フロンその2

    2003年頃から出回りはじめたノンフロン冷媒。ハイドロカーボン系(LPG)で、R-12とほぼ同等の分子の大きさ(R-134aは小さいので漏れやすい)、同等の性能を持つらしいです。部品やコンプレッサオイルはそのまま使え、充填量はR-12の時の30〜50%でOK。高圧圧力はやや低めでも十分熱交換が行われるので、コンプレッサへの負担も小さいとか。100g缶で販売されているようですが、価格は1缶でR-134aの200g缶1缶とほぼ同じ。
    * LPG冷媒に関する情報は当ページの「投稿コーナー」にも掲載しています。
  1. 蛍光剤

    これは冷媒ではありません(笑) 微妙な冷媒漏れを検知するのにサイクル内に混ぜて使う蛍光剤です。予めこれをコンプレッサオイルに10ccほど混ぜておくと、冷媒漏れがあった時に漏れ部位から蛍光剤も一緒に漏れ出します。そこに専用のブラックライトを照射すると黄色く光るので漏れ部位が特定できる、と言うもの。特に微妙な漏れや、もともと漏れた跡が付き難いR-134a系冷媒使用車に有効です。もちろん、R-12用とR-134a用があります。
    詳しくは電装屋さんか修理工場にお問い合わせ下さい。

     

 

B. 冷媒とコンプレッサオイルの交換

こんな話は聞いたこと無い・・・まぁ、そうでしょう。特にR-12の交換なんてタブーかもしれません。しかし、昭和40年代の資料などで調べていくと、「冷媒とコンプレッサオイルは毎シーズンの初めに交換する」と記載されています。なぜ交換なんて必要あるのか?? 理由は水分です。使い続けると水分を含んでしまうので、漏れが無くても一旦全部抜いて、新しいガスに入れ換えるのが望ましいそうです。

サイクル内に水分は厳禁です。これは主に2つ理由があります。

充填時には予め真空引きを行いますが、目的は充填し易くする為や、気密度をチェックする為だけでなく、常温でも水分を蒸発させてカラカラにさせる為でもあります。しっかり真空引きすれば大丈夫そうですが、実はそうでもありません。使用過程で水分が浸入してきます。これは主にゴム部からです。ゴムはミクロの世界では穴だらけですから、どうしても水分が透過していきます。

R-12と水分が化学変化を起こすと、

CCl2F2 + 2H2O -> 2HCl + 2HF + CO2
冷媒(R-12)   水分   塩酸       二酸化炭素 

と言うように塩酸に変化します。これが鉄、アルミ、銅を腐食させてしまいます。
長期間使用したエアコンサイクル部品を分解すると、かなりの腐食を目の当たりにします。コンデンサやエバポからガス漏れを起こす事もありますが、原因は大抵コレです。
従ってR-12を充填したまま補充だけで何年も使用すると塩酸濃度が増すので、構成部品をダメにしてしまいます。また、補充を繰り返すと、充填されている総量がわからなくなるので、充填量管理の意味からも好ましい事ではありません。

一方、コンプレッサオイルも吸湿すると劣化し、特にコンプレッサ本体の潤滑不良を引き起こします。新品のR-12用コンプレッサオイル(スニソオイル)は無色透明です。吸湿すると黄色っぽく変色し、酷くなると茶褐色になります。また、コンプレッサオイルは冷媒がR-12用とR-134a用で異なり、互換性はありません。

以下はコンプレッサオイル交換の手順です。使用頻度にもよりますが、旧車なら5〜10年に1回は交換すべきだと思います。オイル交換=冷媒も交換になるので、配管を外すような修理の場合は必ずやりたいメニューの一つです。

【コンプレッサオイル交換】

  1. 冷媒が入っている場合はオイルリターン運転を行います。
    これはオイルがサイクル内に分散しているので、極力コンプに戻すために行います。エンジンを掛けコンプをONし、約1000rpmで10分ほどアイドルで放置します。これである程度のオイル回収は出来ます(完全回収は不可能)。冷媒がない場合はコンプONに出来ないのでパスです。
  2. 冷媒を抜きます。
  3. 230などの70年代前半のコンプレッサにはドレンがあるので、ここを緩めれば排出します。230に使われているSWP167-3A型コンプでは100〜150ccくらい抜けます(総量の約半分)。70年代後半以降はドレンが無くなるので、このタイプの場合はコンプを一旦取り外し、逆さにして配管継ぎ手から抜きます。
    画像の車両では、前回のオイル交換後10年使用しました。抜き取ったオイル異物の混入は無かったものの、コーヒー色となっており、かなりマズイ状態です。
    また、画像ではL字のツールでトレンボルトを緩めようとしていますが、ボルトが固着しているのでソケットレンチでないと緩まないと思います。
  4. オイルを充填します。充填量は抜いた分だけが基本。配管を外している場合は低圧側から注入、それ以外ではゲージマニホールドを使って注入することが出来ます。
  5. 続けて真空引き、冷媒充填を行います。


 

C. オススメの冷媒は?

このご時世、R-12を使用するのは犯罪に近いカモ。↑のほうでも触れましたが、そもそも国内では製造/輸入が禁止されており、入手困難なハズ。当然高価です。と言っても案外流通しているみたいですね。これは密造品の可能性が高いと聞いた事があります。製造方法は比較的易しい為、アジアなどの発展途上国で密造されたものが不正に持ち込まれているとか・・・ 真偽のほどは定かではありませんが、特にサビの無い綺麗な缶の場合は可能性大なのではないでしょうか?

個人的には、R-12では排出時の処理が面倒なのと塩酸化が怖いので、ノンフロン冷媒に変更しています。これに落ち着くまではR-134aも試しましたが、やはり漏れ易いです。R-134aも温室効果ガスに指定されているので、近いうちに規制もされる予定です。
ノンフロン冷媒はどうも知名度が低いので、電装屋さんからも「なんじゃそれ」と言われるかもしれません。 別に私はノンフロン冷媒の会社からお金を貰っている訳ではありません(笑)が、R-12よりメリットはあります。

 

冷媒タイプ 長所 短所
旧冷媒(R-12)
  • 製造が比較的容易
  • 人体へは無害
  • 冷媒としての性質良
  • オゾン層破壊
  • 温室効果ガス(CO2の8000倍)
  • 水分が混ざると塩酸になり、部品を腐食させる。
  • 大気放出は法規に抵触
ノンフロン冷媒
  • R-12のシステムにそのまま使用可(改造不要)
  • 高圧圧力が低い為、コンプレッサへの負荷、エンジンのパワーロスが少ない
  • R-134aよりガス漏れしにくい(R-12とほぼ同等)
  • 価格はR-134aとほぼ同等
  • 可燃ガスである (充填時には火気厳禁)
  • 知名度低(笑)
  • 高圧圧力が低いので、コンプON直後の立ち上がり特性やアイドル時の効きがR-12より悪い

自分のクルマには2003年以降、3台に試しました。冷えはそれほど悪くありませんし、トラブルも皆無です。ただ、一番の懸念点は可燃ガスであること。海外ではガス漏れで爆発したという事故があったとかなかったとか??
国内では今のところそのような事例はありません。旧車の場合は隙間も多いので、室内外ともに気密性は大したことないハズ。多少の漏れが発生してもすぐに拡散してしまい、事実上問題ないと思います。

冷え以外の性能に関しては、充填量がR-12の1/3で済む為、高圧圧力が低めになります。これはコンプの負荷を軽減するので、寿命やエンジンのパワーロスの抑制にもつながるメリットがあります。しかし、これの裏返しの現象として、高圧が低いため走行風の少ない低速時の効きがやや甘く、特に冷え始めるのに少し時間が掛かります。走行風が当れば改善はされますが。

ちなみに、ノンフロン冷媒はLPガス系ですが、燃料ではないので無臭です。

 

6.参考データ

230純正エアコンの各仕様
項目 仕様
最大冷房能力 7000kcal/h
  コンプレッサ排気量 167cc
  コップレッサマグネットクラッチ消費電力 30W
  コンプレッサオイル種類、容量 スニソオイル(冷凍機油#410) 250cc
  冷媒充填量(R-12) 1200g
  ブロアモータ出力 210W
  コンプレッサON時エンジン回転数 800rpm

 

7. 主な関連記事

 

一覧へ戻る