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リヤホイールシリンダ(リヤブレーキ強化)その2

適用車種 230、330
難易度指数:4 汎用品の組み替え

1.目的/概要

目的は「リヤホイールシリンダ(リヤブレーキ強化)その1」ですでに書いていますので、その続きです。「その1」では純正部品を使用していたため、それらが製廃となってしまってから購入できなくなっていました。

そのうち、

という情報があり装着してみた、が本ページの内容です。

 

2.部品の選定

本実験のきっかけは「投稿コーナー」の「No.20 リヤホイールシリンダ流用情報」に掲載されています。多少ダブりますが、要約すると下記。

仕様的には230でいうところのABS付き車用の純正部番:44100-P4401/44101-P4401に相当し、形状違いの部分はブレーキチューブ配策変更により多少曲げ加工が発生しますが、ある程度のスキルがあれば小加工の部類に入ると思います。

次に社外品のお話。純正品の供給が今でもあるのは、メーカー出荷実績が一定レベルを超えているからだと思われ、小ロット生産を続けていただいているのは非常にありがたいことです。とはいえちょっと高い! 今回のような仕様変更の場合は左右セットとなりますが、それだと7万円近い価格になってしまいます。ヤフオクのストアで「S30Z ブレーキ シリンダー」で検索してヒットしたものの中から「M.Speed3号店」というお店から社外品の新品がしかも格安で出品されていたので購入してみました。

下の画像は購入時のものです。






事前に判明していたブレーキチューブとブリーダープラグの位置関係をアップにしました。


取り外した部品(左側)との比較。


ブリーダープラグはスパナサイズが8mmと純正部品と異なる(10mm)ことが判明、機能的には全く問題ないものの車両全体の仕様統一と作業効率化のために変更しました。

下図の左側が社外シリンダに装着されていたもの、右側が純正部品。



ホイールシリンダ ブリーダープラグ
純正部品番号 右:44100-N3001
左:44101-N3001
―(社外品) 41128-JS10A
使用個数 左右各1個
販売価格(2021年12月現在) \33,600(片側) \16,000(左右セット) \340
 

3.取付け

ここでは本部品固有の項目だけ記載します。

ブレーキチューブ曲げ加工

下図は右リヤブレーキのバックプレート裏側から撮影したノーマル状態の画像。シリンダ変更に伴ってブレーキチューブは「A」の部位にねじ込むことになるので、少しずつ「手曲げ」で位置を変更します。急にやると折れるので注意。完全でなくてもだいたいで大丈夫です。また、ブレーキチューブ組付けのタイミングはホイールシリンダを固定する前、つまり固定用のU字プレートを差し込む前に仮締めでよいのでチューブを先に組み付けたほうが良いです。これはホイールシリンダ変更だけでなく脱着もこのほうが個人的にはベターだと思っています。

下図は移設後。チューブは周囲のサスペンション部品と干渉しないように注意します。接触は絶対NG。振動で穴が開き、フルードが流出します。

 

U字ピン  

恐らく純正品なら問題にはならず、この社外品特有の問題だと思うのですが、ホイールシリンダを固定する(スライドはできるが抜け止め)U字ピンが2個あるうちのバネ材側の形状に問題があり、2枚重ねの状態でロックできずに抜けてしまうことがありました(左右とも)。この作業時、時間がなく旧部品を再利用して組んでしまいましたが、後によく確認したところ下の画像「A」部の部分の折り曲げ角度が深すぎるのが原因で、2つの凸が相手の穴に噛まずにロック不良を起こしていたようです。すべての部品で問題になるのかどうかは分かりませんが、要注意だと思います。

 

ブレーキ調整

これも純正品なら躓かないところ。この社外品の場合はココも一癖ありました。普通に組んでエア抜き手前の工程でシューの調整をします。オートアジャスタがあるので、組み立て時は一番緩い(隙間大)状態にしておき、単純にサイドブレーキを何度も操作するとカチカチ音がして自動調整していきます。カチカチ言わなくなったらだいたいその辺がいい塩梅のところ。ですが、この部品を装着したときは初めからカチカチ音がしませんでした。

よく見ると、シリンダ部にあるレバーがオートアジャスタの歯に接触しておらず常時空振り状態でした(あいにく撮影し損ねました)。接触していないというか、両者は1mm以上の隙間が空くほど。いったんシリンダASSYを取り外し、レバーを歯に寄せるようなイメージで手曲げ修正しました。この作業時はレバー一部削ったりもしましたが、結論としては手曲げだけで良いかと思います。状況確認と修正作業はもちろん装着前が好ましいです。なお、元の230用のレバーは軸部分の寸法が異なるため、再利用はできません。

下図は修正後。レバーを上方に曲げてオートアジャスタの歯の部分に十分接触する(食い込む)ようにします。


 

そのほか、 ホイールシリンダ交換全般に言えることですが、原則としてホーシングの後ろにあるサイドブレーキのロッド(イコライザ)の調整が必要になります。本作業は仕様変更なので、必須ともいえます。不十分だとシュー調整が十分できず、ペダル踏み代が多い、サイドブレーキワイヤー調整をしても引き代が大きすぎるなどの弊害が出ます。ポイントはサイドブレーキ開放時にホイールシリンダのサイドブレーキレバーが十分戻っている事です。戻りが甘いと自動調整も甘くなります。イコライザ調整については「自分でメンテ シャシ編」の「サイドブレーキ調整」を参照ください。  

 

ということで問題はすべてクリアできて実験成功。社外品の利用で今回の作業はちょっと手直しが伴いました。このページで注意ポイントを挙げましたので、そんなに手こずらないハズ。シリンダが新品になるし、普通の230なら制動力15%アップしますので、やる価値はあるかな、と思います。

 

4.残課題

課題は今後のメンテナンスです。ホイールシリンダはできれば車検ごと(少走行なら4〜5年に一回でも可)にオーバーホールし中のピストンカップ交換は実施したいのですが、カップ単独では純正品が装着できません。そこでピストンも純正品とセットで交換すれば純正カップが装着できます。これについては「投稿コーナー」の「No.20 リヤホイールシリンダ流用情報」でも触れていますので、これをベースに実施予定です。今回の車両では早くても2023年以降ですので、実施後は本ページにも追記する予定です。漏れるまでノーメンテで使い続け、漏れ始めたらシリンダASSY交換という手もあり、ある意味今風のメンテ手法とも言えますが、部品自体が貴重なので有効に使いたいです。

 

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